CONTAXのコンパクトカメラの伝統を受け継いだシンプルなデザインの「CONTAX Tvs DIGITAL」。写真のシルバーのほかに、チタンブラックもラインアップされる。シルバーの発売は2月20日で、実売価格は9万9800円。チタンブラックは4月下旬発売予定で、予想実売価格は11万円前後となっている

 京セラの「CONTAX Tvs DIGITAL」は、写真ファンのために作られたハイクラスな500万画素3倍ズームレンズ搭載のコンパクトデジタルカメラだ。約20年前、フィルムカメラで“高級コンパクト”というジャンルを創り出した「CONTAX Tシリーズ」のデジタル版といえる。

 写真ファンが愛着を持って使えるコンパクトデジカメ、というのがこの機種のコンセプト。本体の小ささや価格の安さばかりを競ったコンパクトカメラでは、道具としての愛着がいまひとつわきにくい…と感じている人たちのために作られた高級モデルなので、通常の物差しで「ボディが大きいし価格も高いからダメ」と切り捨ててしまうことはできない。長い間“愛機”として使い続けられる信頼性や撮影性能、さらに優れた操作性が求められるモデルだという前提で見ていこう。

すっきりとまとまった背面パネル。液晶モニターは日中屋外での視認性の高さを特徴とした“デイファイン液晶”と呼ばれるものだが、屋外ではちょっと暗めの印象だ。また、被写体の暗い部分の階調表現が苦手で、まるでソラリゼーション効果をかけたかのように滑らかさが失われる傾向がある

●オーソドックスでわかりやすい操作系

 現在のコンパクトデジカメと比べるとボディはちょっと大柄だが、外装がチタン合金で覆われているうえ、シャッターボタンに多結晶サファイアが使われているなど、見た目の質感や手触りにまで気を遣った高級素材が採用されている。こういった仕上げのコンパクトデジカメは他には見あたらないので、ちょっと価格が高いのも仕方ないかな…と納得させられるものがある。しかし、実際に本体を手にすると、手に伝わる高級感や堅牢さはフィルムカメラのTvsなどにあと一歩およばない…という印象なのが少し残念だ。

 実際の使用に関しては、ズームやモード変更などの操作系がよく整理されているので、マニュアルを読まなくても分かりやすい点は評価できる。ただし、ボディの重心がバッテリーや液晶パネルのある左半分に偏っている点は気になった。撮影の基本は両手持ちなので、重心がどちらにあってもよさそうなものだが、ボディを左右逆に持ってみると手にしっくりなじむことからも、重量バランスは見直す余地がありそうだ。

記録メディアはSDメモリーカード。バッテリーは、本体のサイズからすると比較的大きめの専用リチウムイオン充電池。付属のACアダプターを用いて、満充電まで約5時間 撮影時に「DISPLAY」ボタンを押すと、撮影しようとする画像のヒストグラムを画面内にリアルタイムで表示でき、±ボタンで露出補正が行えるのがメリットだ

 電源を入れてから撮影可能になるまでの時間は5秒弱で、ストロボ使用時の充電時間もやや長めなことから、1枚撮影すると次にシャッターが切れるまでに数秒は待たされる。しかし、カメラの性格から考えて、バッグから素早く取り出して撮影したり、何枚も連写し続けるようなケースは少ないと考えられるので、特に問題はないだろう。光学ファインダーもクリアな像で、視度調整機能が付いている点はさすがといえる。

 また、シャッターボタンの重さやクリック感などのチューニングから、筆者としてはシャッタータイミングがやや取りづらいと感じた。

 使っていて便利だったのは、3つの独立したメニューボタンを用意してあることだ。左上のボタンではホワイトバランスやISO感度などの設定、左下のC.MENUボタンでは連写やAFモードなどの基本設定、右下のD.MENUボタンでは撮影クオリティやホワイトバランスなどの設定という具合に分かれているので、設定したい項目がすぐに呼び出せるのが便利。ただし、メニューなどを操作する4方向ボタンの押し心地はいまひとつで、特に中心の決定ボタンが押しづらいと感じた。

●雰囲気のある画像が撮影できる点に注目!

レンズは、カール ツァイスブランドによる3倍ズームで、色ヌケと階調表現のよさで定評のある「T*(ティー・スター)」コーティングが施されている。絞り羽根は3枚構成だ 撮影モードは、通常の「P(プログラム)」に加えて「AV(絞り優先モード)」と動画撮影モードを用意。Tシリーズと同様の位置に設けられたロータリー式のモードダイヤルで、カチカチと小気味よく切り替えられる

 気になる画質は、ひとことで言えば写真に大切な中間トーンを豊かに再現する自然な 仕上がり。発色は全体に渋めの傾向で、ちょっと古い写真を連想させる赤茶色の表現が印象的だ。この画質は、写真の見方によって大きく評価が分かれると思う。パソコンの画面に100%のサイズで表示させ、隅から隅までジックリと見る「画像データ解析」的な見方では、明るい部分の白飛びや暗い部分のノイズが目に入ってしまい、「それほど画質が高くないのかなぁ?」と思うかもしれない。

 ところが、画像全体を1枚の絵として捉える「写真」的な見方をすると、画像全体のたたずまいに本機ならではの雰囲気のよさが見られる。中間のトーン描写が絶妙なうえ、ディテールの表現が自然なので木肌や金属などの質感がよく分かり、実際の解像力以上に細かい部分がすっきりと見えるのだ。リアルではないのだが、どこか惹き付けられる魅力を持った不思議な表現力といえよう。

やや薄暗いレストランの店内をフルオートで撮影。シャッタースピードは1/5秒とかなりスローだが、手持ちでもほとんどブレを感じさせない。ランプ自体やランプ付近の壁の白飛びは激しいが、柔らかな雰囲気の描写には好感が持てる(1/6秒、F2.8、ISO160) 夕暮れに照らされる建造物をフルオートで撮影。夕陽の当たる金属の微妙な色彩とグラデーション、さらに質感の表現がとてもすばらしい。強い照り返しが画面に入ってもレンズ内反射が少なく、フレアやゴーストが生じにくいのはお見事!(1/180秒、F4.8、ISO80)

 全体的に見ると、独特な画像表現力と他機種にはない高級感を持った個性的なコンパクトデジカメだといえる。欲をいえば、あと2万~3万円ほど価格が高くなってでも、フィルムカメラのTシリーズ並みの高い質感と使い勝手を持ったモデルの登場も望みたい。他にはないこだわりこそが、CONTAXのTシリーズのコンセプトであるはずだから。

(吉村 永=ライター)

晴天屋外でフルオート撮影を行ってみた(1/350秒、F6.7、ISO80)。全体に色乗りはよいのだが、派手ではなく渋い発色となっている。家の写真に写っている2本の樹木の葉からも、赤茶色っぽい独特の色乗りが感じられる。花の写真では、淡い藤色や黄色の微妙なトーンがうまく描き分けられていることが分かる(1/180秒、F4.0、ISO80)

夕暮れの景色をマニュアルで撮影してみた。夕陽の色をより印象的に出したかったので、絞り優先モードで絞りをF6.7、ISO感度は80相当、ホワイトバランスを晴天、露出補正を-1.0として撮影した。コンパクトデジカメでこのような細かな設定がやりやすい点は優秀だ(1/500秒、F6.7、ISO80) 夕方の温室内でフルオートによるマクロ撮影を行ってみた。カタログ値では、マクロは15cmまで接近できるとなっているが、これはCCDからの距離表示となっているため、実際にはレンズ前から約10cmまで近寄れた。ちなみにマクロモードにすると、自動的にズームがワイド端に固定される(1/60秒、F2.8、ISO80)

製品名 CONTAX Tvs DIGITAL
発売 京セラ(http://www.kyocera.co.jp/
実売価格 9万9800円(シルバー)、11万円前後(チタンブラック)
有効画素数 500万画素
レンズ 光学3倍ズーム(35mm判換算35~105mm)、F2.8~4.8
記録媒体 SDメモリーカード/マルチメディアカード
撮影範囲 60cm~∞(通常)、15~60cm(マクロ)
液晶モニター 1.6型TFT、約8.5万画素
PCとの接続 USB
電源 専用リチウムイオン充電池
外形寸法、重量 112(W)×60(H)×33(D)mm、210g(本体のみ)