10年前に比べて、日本人が摂取している1日の総エネルギー量と、炭水化物(糖質と食物繊維)摂取量が減少傾向にあるという(平成25年度国民健康・栄養調査)。にもかかわらず、男性ではメタボや肥満が増加、10代の糖尿病も急増中だ。これは、欧米型の食事が一般的になり、ファストフードなどの摂取割合が増加、それによって脂肪摂取量が多くなったこと、また、交通の便が良くなったおかげで歩く機会が減り、地方では車での移動が増えて慢性的な運動不足になっていることが原因の一部だと考えられている。

 一方、女性はダイエット志向の高まりとともに「糖質は太るもと」という考え方が広まり、やせすぎの人が増加傾向にあり、エネルギー不足が原因で不調を訴える人も増えているようだ。

平成15~25年までのたんぱく質・脂質・炭水化物・エネルギーの摂取量の年次推移(20 歳以上)平成25年国民健康・栄養調査結果より
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日本人の平均BMI(肥満指数、25以上が肥満)推移【参考文献】 国民健康・栄養調査(厚生労働省、1974年調査なし)、学校保健統計(文部科学省)

 特にここ数年、「糖質制限」ブームで糖質を避けることで安心し、肉類などの高脂肪食などの偏食を招いて結果的に健康を害する可能性が高まっているという。

 しかし、悪者扱いされる糖質は、人間のエネルギーの半分をまかなう大切な栄養素。そこで、糖質の量だけではなく、取り方や質に配慮して摂取することで、健康を保つことができるという考え方「スローカロリー」を提唱する「スローカロリー研究会」が2015年2月に発足し、3月4日、初の講演会が開催された。

 この研究会に参加しているのは、生活習慣病の研究者やスポーツ医学、栄養学の専門家たち。また、三井製糖をはじめ、浅田飴や井村屋、エクスプロージョン、ニュートリー、ボディフィット、ミヨシ油脂など食品メーカーやスポーツ関連企業など7社が協賛企業として参加している。顧問は一般社団法人日本生活習慣病予防協会理事長で、タニタ体重化学研究所所長も務める池田義雄氏、武庫川女子大学国際健康開発研究所教授の家森幸男氏、理事長は新山手病院生活習慣病センター長の宮崎滋氏、理事には慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授の勝川史憲氏や三井製糖商品開発部の奥野雅浩氏、監事に東京女子医科大学病院栄養管理部主任の柴崎千絵里氏などが務める。

 「スローカロリー研究会の目的は、糖質をはじめ食べたものをゆっくり消化吸収することが、体にどのようなメリットがあるかを調べることにあります。糖尿病や肥満などの生活習慣病のリスクを低減するには、エネルギーの量だけで判断するのではなく、体内での使われ方という質を考慮することが大切」と、同研究会の宮崎滋理事長は話す。

 スローカロリーとは、体内でゆっくり吸収される食べ物のエネルギーを意味する。今までは、糖質や脂質、たんぱく質の3大栄養素をはじめ、ミネラルやビタミン等は、速やかに消化、吸収することが体の役に立つと考えられていた。しかし、短時間で消化、吸収される糖質は、急激に血糖を上昇させて、すい臓からのインスリンの分泌を高める。インスリンは脂肪を溜め込みやすい状況を作り出してしまい、結果的に肥満を起こしやすく、動脈硬化を生じやすいことがわかってきた。

 「速やかに消化・吸収することが、必ずしも良いことではありません。そこで、口から取り入れた食べ物のカロリーをゆっくり吸収する食材を選ぶことが大切。栄養の取り方、食べ方を変えることで太りにくい健康な体づくりにつながるのです」(池田顧問)

■変更履歴
日本人の平均BMI(肥満指数、25以上が肥満)推移のグラフの出典に誤りがありました。スローカロリー研究会ではなく、正しくは【参考文献】 国民健康・栄養調査(厚生労働省、1974年調査なし)、学校保健統計(文部科学省)です。お詫びして訂正します。[2015/3/10 11:10]