ルンバの動きは「ランダム」ではない!

──まず伺いたいのは、ルンバの動き、つまりナビゲーションについてです。最近発表されたミーレの「Scout RX1」、ネイト ロボティクスの「Botvacシリーズ」、ダイソンの「ダイソン 360 Eye」すべてが、部屋の大きさや自己位置をカメラやセンサーで把握して移動する「システムナビゲーション」を採用しています。そして各社とも、「ランダムナビゲーションに比べて効率が良い」としています。そもそも、ルンバシリーズのナビゲーションはどのように行っているのでしょうか。

ミーレ「Scout RX1」発表会の資料より。ルンバシリーズを名指ししているわけではないが、「ランダムナビゲーション」の弱点を指摘している
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こちらはネイト ロボティクス「Botvacシリーズ」発表会の資料より。同じように「ランダムな軌跡=非効率」としている
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「ダイソン 360 Eye」の発表会でのプレゼンテーションの模様。右側の図はダイソン 360 Eyeが搭載する「360°ビジョンシステム」によって把握した部屋の形状と、ダイソン 360 Eyeが掃除した軌跡を表したもの
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曽根氏: ネイト ロボティクスやダイソン、LGエレクトロニクスはSLAMを採用していると公言しています。レーザーセンサーやカメラなどを用いて壁や家具との距離を測り、システマチックな動きによって掃除をします。それはたしかにルンバとは違うものですが、「フロアをくまなく掃除したい」という最終目的は同じです。何もない状態から指定されたエリアを全面走破するためには、どのように動けばいいのかというのが前提条件で、それに対するアプローチの違いに過ぎません。

 また、ルンバの動きはランダムではありません。掃除をスタートすると旋回して広がっていき、壁に当たると壁沿いに走っていきます。しばらく壁沿いに走って壁にぶつかると、ランダムに当たっているように見える形で壁をバウンドしながら走っていきます。

──最初に旋回しながら広がっていくのはどういう意味があるのでしょうか。

曽根氏: 旋回して広がっていくことで、自由に走れるスペースがどれだけあるかを測るのです。壁沿いに進むことで障害物の長さを検知し、バウンドしていくことによって障害物にどれくらいの頻度でぶつかるか、障害物と障害物の間にどれくらいの距離があるのかを全部数値として蓄えていきます。

 ルンバが自分でどのように動けるのか、どれくらいの速度で走れるのか、どれくらい走ったらどれくらいの面積を掃除できるのかというのを内部パラメーターとして持っています。それを掛け合わせることで、あくまでも統計的な計算ですが、そのエリアを1カ所平均4回走るにはどれくらいの時間がかかるのかが算出されます。

 その動きの中で、いろいろな障害物にぶつかることによって、自分がどういう状況に置かれているかをいち早く認識し、その環境、状況に合わせた動作のパターンを選択していく。これがカタログなどに書かれている「高速応答プロセス iAdapt」の仕組みです。

──「高速応答プロセス iAdapt」と、「人工知能 AWARE」の違いはどういうものなのでしょうか?

曽根氏: iAdaptは動作を統括するプログラムであり、人工知能はその中に含まれています。人工知能AWAREは、動きの中でセンサーによって自分が今どういう状況にいるかを把握します。アイロボットはすでに10年以上ロボット掃除機を手がけているので、それまでの知見がだいぶたまっています。現状と過去の知見から、その部屋を1カ所平均で4回、別々の角度から走るにはこれだけの時間が必要と予測し、どのように動作すればいいのかを判断します。