東日本大震災では繰り返し起こる強い余震や地盤の液状化などにより、これまでと異なる被害を住宅にもたらした。一戸建ての住宅メーカーは震災後、どのように地震対策に取り組んだのか。今回は住友林業の取り組みを解説する。

独自開発のパネルで木造軸組構法の耐震性をアップ

 日本の木造住宅で最も多い伝統的な軸組工法は、柱と土台・梁を斜め方向の筋かい(すじかい=柱と柱の間に対角線に取りつける補強材)で固定することなどで、耐震性を確保する形が基本だ。しかし近年、筋かいの代わりに、構造用合板などの面材を張るケースも増えている。住友林業も当初は筋かいによる木造軸組工法を用いていたが、2000年10月に発売したマルチバランス構法から、「きづれパネル」と呼ばれる耐力面材などによる軸組工法に切り替えた。

 きづれパネルは幅の小さな杉板を格子状に張り合わせたパネルで、厚さ9mmの構造用合板の約1.3倍の強さ(剛性)があり、重さはその6~7割と軽い。独自の内装下地兼用のタフパネルと組み合わせることや、きづれパネルを柱に打ちつける際の釘の数を通常の2倍にするダブルネイル工法とすることで壁倍率(※1)が5.0、建築基準法レベルの筋かいを用いた耐力壁比べて、同じ水平方向の力で変形量が5分の1という強さだ。

 「格子状なので通風に優れています。またマルチバランス構法は筋かいに邪魔されず断熱材をムラなく充填できるので、断熱性能を最大限に発揮しやすい点もメリットです」と話すのは、住宅事業本部技術部技術開発グループ副部長の高嶋宏氏だ。



※1:壁倍率
建築基準法で定められた壁の強度を表す数値。地震や台風などの水平方向の力に壁自身が抵抗する力の大きさを「比」で表し、数値が大きいほど強い。


マルチバランス構法は格子状のきづれパネルで建物を支える
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ゴムで地震エネルギーを吸収するパネルも開発

 さらに2009年2月には、建物に伝わる地震の力を低減する効果がある「地震エネルギー吸収パネル」を開発。これは同年にスタートした長期優良住宅の認定制度に合わせたものだという。

 開発に携わった同技術開発グループの金子雅文マネージャーによると、「長期優良住宅では長持ちする住宅が求められるため、大地震はもちろんのこと、大地震のあとに繰り返し発生する余震にも耐えられる構造が必要です。そこで中央にゴムを取り付けた金物を壁に設置することで、地震による建物の変形量を最大で約70%低減できるようにしました」とのこと。

 ゴムを用いて地震エネルギーを吸収する仕組みは制震システムと同様の原理だが、同社では制震という呼び方はせず、あくまで耐震技術の1つと位置づけている。

高剛性・高減衰ゴムが地震エネルギーを熱エネルギーに変換して吸収する
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