1999円の“激安ベビーバギー”に挑戦

ベビーバギーと三輪車を開発したマーチャンダイザーの浜田昇治氏。「おじいちゃん、おばあちゃん世代をターゲットにした少し豪華な商品も今後開発したい」
[画像のクリックで拡大表示]

 「西松屋はベビーバギーのシェアが低いので上げていきたい、価格は1999円で作ってほしいというのが、大村社長から最初に与えられた課題だった」

 こう話すのは、ベビーバギーのPBを開発したマーチャンダイザーの浜田昇治氏だ。三洋電機(現パナソニック)と日立製作所で産業用ロボットの設計に携わり、30年以上、機械設計の最前線を歩いてきた。2009年4月に西松屋に入社。「製造業の現場とは何から何まで違うが、利益を自分で把握できるのがいい。どれだけ売れば会社に貢献できるのか、目標が明快でやりがいがあると感じた」と話す。

 ただ、ベビーバギーを1999円で作るのは常識を超えた挑戦だった。ネット通販でも市場最低価格は3000円台。製造コストが安価な中国で生産しても、安全性や耐久性が保障されなければ商品価値はゼロに等しい。加えて、価格にインパクトがあっても消費者に支持されなかったり、利益が確保できないものはPBとして開発する意味がない。浜田氏は、中国で流通する鉄やプラスチックなどの材料価格も調べ、「1999円は無理だ」と思った。

 とはいえ、生産管理のプロとしての意地もある。工場探しからはじめ、それまで同社にはなかった工場発注用の仕様書作成など、製造業では当たり前の業務を着々とこなしていった。ただし、完成した1999円のベビーバギーは日除けになる幌がなく、2点式のシートベルトでタイヤも小さめだった。「幌がないとカッコ悪いので売れない。売れたとしても長続きしないうえに利益もトントンなので、同時にカッコ良いバージョンも開発した」(同)。

 それが、2999円のベビーバギー第1号だ。横からの紫外線もガードできるよう丸型の大きな日除けを採用。タイヤも走行時の振動を吸収し、乗り心地を考慮して大きめサイズにした。さらにベルトは、乳幼児の急な立ち上がりを防止する肩ベルトを追加して5点式に。折り畳めば省スペースに収納でき、持ち運びにも便利なコンパクト設計も好評だ。

 一番の特徴は、指はさみ防止フレーム。開閉時に乳幼児が指をはさまないよう同社が独自に開発したフレームを取り入れた。「当初はなかった構造上の機能だが、ちょうど本格販売する直前に他社製品で乳幼児が指をはさむ事故が発生したことがきっかけになった」(同)。

 安全性や快適性を重視しながら2999円という激安のベビーバギーは、1週間分の予定台数を発売日に完売。年間3万台を販売し、育児用品の売れ筋商品となった。現在販売している2代目は黒地に赤のパイピングを効かせた、シンプルでおしゃれなデザインが特徴だ。

 「以前は玩具なんてできて当たり前と軽く考えていたが、価格と品質を両立させるのは難しい。前職と違って開発期間が短く、自分の裁量で取り組めるので面白い」と浜田氏。今後も、特別なものではなく、普通に長く愛され続ける商品を作るのが目標だ。

「バギーfanネオ」(2990円)。累計販売台数10万台のヒット商品に
[画像のクリックで拡大表示]
赤ちゃんが指をはさまないようにフレームを改良した
[画像のクリックで拡大表示]
ワンタッチで簡単に開閉できる
[画像のクリックで拡大表示]
コンパクトに折り畳めて軽量。背面のクロスフレームも曲線設計で指をはさまないようになっている
[画像のクリックで拡大表示]
赤ちゃんが急に立ち上がらないよう、腰と股だけでなく肩用ベルトも装備
[画像のクリックで拡大表示]
紫外線やホコリから赤ちゃんを守る大きめのフードも特徴
[画像のクリックで拡大表示]