“分かりやすさ”が魅力、女性客獲得の切り札にも!?

 たしかに大量に仕入れて販売できる飲食店は価格交渉しやすいだろうが、疑問は残る。最近は街場の小さな飲食店でも、フォアグラを低価格で出す店が増えているからだ。先日、筆者の近所にオープンしたばかりの小さなバルのチラシを見ると、「鶏レバーとフォアグラのムース」が630円、「牛フィレ肉とフォアグラのロッシーニ(120g)」が1260円という激安価格だった。

 2013年6月に自由が丘にオープンしたバル「ヴィノテカ メッシーナ」では、アラカルトとしてフォアグラを使用したリゾットやクレームブリュレを提供しているほか、3時間飲み放題付きの「女子会特別プラン」(7品で3980円)にもボリューム満点の「フォアグラと牛ヒレ肉のパイ包み焼き」を入れている。はたしてこれでペイするのかと心配になるが、やはり「フォアグラが以前よりは多少は使いやすい価格になっているとはいえ、ちゃんとしたものを使うと安くはなく、原価率は高い」(水本茂則店長)という。だが女性に人気の高い食材なので、全体の料理や飲み物でバランスをとりつつ、提供しているとのことだ。

 全国で562店舗あるココスも同様で、「大ロットで仕入れできることを割り引いても決して安くはない食材であり、利益を出すことは大変。全体のバランスで収益を確保している」(ココスを運営するゼンショーホールディングス広報室の廣谷直也氏)ということらしい。ただ「高価格帯でも価格以上のバリューがあれば受け入れられるということが分かり、価格帯の幅が広がった」(廣谷氏)というメリットも。

 フォアグラの低価格メニューといえばすぐに思い出すのが、「俺の」グループ(関連記事)。高級レストランのアラカルトで1万5000円で提供されていた「牛フィレ肉のロッシーニ」が、ボリュームアップしたうえに1280円という激安価格で提供され、2011年の初出店当時は、業界に激震が走った。登場時のインパクトの強さが、その後の快進撃の原動力となっていることは間違いない。

 つまり「原価率の高い、インパクトのあるメニューを看板にして客を呼び、ほかの価格でバランスをとる」という「俺の」スタイルをビジネスモデルとする飲食店が街場にも増えてきているのだろう。たしかにフォアグラは原価率の高い食材として一番分かりやすい。今年の忘年会シーズンには、フォアグラ旋風が吹き荒れるかもしれない。 

2013年10月24日にオープンした「グレーヌマルシェ」(横浜市港北区)の「鶏レバーとフォアグラのムース」(写真左、630円)、「牛フィレ肉とフォアグラのロッシーニ(120g)」(写真右、1260円)。激安価格だがどちらも合格点以上の味だった
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2013年6月に自由が丘にオープンしたバル「ヴィノテカ メッシーナ」ではアラカルトとして「フォアグラとトリュフのリゾット」(写真左、1280円)や「フォアグラのクレームブリュレ」(680円)を提供。3時間飲み放題付きの女子会特別プラン(7品で3980円)にも「フォアグラと牛ヒレ肉のパイ包み焼き」(写真右)を入れている
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(文/桑原恵美子)