なぜこれほど“大放出”されているのか?

 9月にオープンしたフォアグラバル アジルジョーヌの本店は、フォアグラ料理が名物の高級フレンチ店「エルブランシュ」。「得意とするフォアグラをもっと身近に、もっといろんな料理で楽しんでもらいたい」と考え、バルというカジュアルな形式の姉妹店をオープンしたという。

 同店アシスタントマネジャーの佐竹佑介氏によると、フォアグラを使用したメニューが数多く登場している理由のひとつが、最近の飲食店のトレンドの変化なのだという。人気飲食店の形態が、フランス料理店からよりカジュアルな「ビストロ」、さらにカジュアルな「バル」へと移行。高級レストランを利用していた経済力のある層も、自由で居心地の良い“ゆるさ“を求め、あえてバルに行くようになった。そのため、カジュアルな飲食スタイルであっても、より食材の質が高い料理が求められるようになっているというのだ。

 「バルのメニューではイタリア料理、フランス料理、スペイン料理が混在していることが多い。それは飲食店を選ぶとき、料理のジャンルではなく『バル』という利用シーンで選ぶ人が増えているからでは」(佐竹氏)。同店ではこうしたトレンドから「フォアグラという高級素材をバルという気軽な形態で提供すれば、ニーズがある」と考え、約40種類あるメニューの約半数にフォアグラを使っている。客単価はドリンクを入れても1人5000円前後。オープン以来、ほぼ連日満席状態が続いているという。

 また、アベノミクス効果でプチ贅沢を楽しみたいという気分が盛り上がっていることも、ブームを後押ししているという見方もある。

 「ホテルでの食事はどうしても高価なイメージがある。そのうえ、食べ放題といってもフォアグラのような高級素材を提供するプランは以前なら『高そう』と敬遠されがちだった。しかし最近は『少し贅沢をしてみたい』という気分が高まり、外食の選択肢に挙がりやすくなっていると感じる」(ザ・プリンスパークタワー東京 東京プリンスホテル マーケティング戦略 マネージャー補佐 森 淳氏)。

 森氏によると、同ホテルの宿泊客も以前は価格重視で部屋を選ぶ人が多かったが、今年は価格が高めでも東京タワーの見える部屋から埋まっているという。高級イメージの強い「ザ・プリンス パークタワー東京」のステーキハウスも来客数がぐっと増えていて、好景気感がはっきりと感じられるそうだ。そのため今年のニューイヤープランは、例年より2週間早めに予約を開始しているが、すでに3割程度は埋まっているとのこと。

 高級素材のなかでも特にフォアグラを使った料理が目立つのは、キャビアやトリュフより料理のバリエーションが豊富だという要因が大きいらしい。「キャビアはトッピングのような用途にしか使えず、トリュフは香りが魅力なので、どの料理も似た印象になりがち。その点、フォアグラは温かい料理でも冷たい料理でも使え、ほかの料理の調味料的な使い方もできる。アレンジの幅が広い」(フォアグラバル アジルジョーヌの佐竹氏)。

「フォアグラ風味のフレンチトースト」(840円)。卵液の中にフォアグラを入れて香りをつけ、さらに焼き上げたトーストの上に凍らせた濃厚テリーヌをチーズのように削りおろして仕上げている
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「フォアグラのクレームブリュレ」(840円)。はっきりとフォアグラの濃厚なコクが感じられる。「非常にシンプルな調理法だが、どのようにフォアグラをミックスしているかは企業秘密」(佐竹氏)。前菜だが、デザートで食べてもOK
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フォアグラバル アジルジョーヌの客単価はドリンクを入れても1人5000円前後。男女比は3対7で女性が多く、カップルと女性グループ客が中心。メニューの半分程度を占めるフォアグラ料理のみを集中的に注文する人がとても多いという
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