ここで挙げた製品やサービスのキーワードとなるのが「フィジカルコンピューティング」だ。フィジカルコンピューティングとは、「『コンピュータの機能上の制約を超え、日常生活環境に沿った人(身体)と端末との新しいインタラクションを探ることで、身の回りの世界に新しい広がり生まれるのではないか』という考えに基づいたもの」。簡単に言えばコンピュータの入出力を外部に拡張してコンピュータの可能性をさらに広げることだ(関連記事:第1回 モノづくりの第一歩、フィジカル・コンピューティングとは?!)。そして現在、身近なコンピュータとして最も普及しているのがスマートフォンである。

スマホで現実化するフィジカルコンピューティング

 フィジカルコンピューティングの実現には、「新しいインタラクションを探る」ことだったり、マーケティング施策なども含めて企画したりする必要があったりするため、ソフトウエアエンジニア、ハードウエアエンジニア、さらにはデザイナー、プランナーなど多くの人がかかわって開発することになる。こうした異なる分野の人が連携してプロトタイプを作るために利用されるのが、「Arduino」や「Raspberry Pi」といったツールキットだ。これらの名前を聞いたことがある方は多いだろう。

 ただし、フィジカルコンピューティングという概念自体はスマートフォンの登場以前から存在していたものであり、当初コンピュータとして想定されていたのはパソコンである。各種ツールキットもスマートフォンをメインの連携ターゲットにしているわけではない。

 そうであるなら、スマートフォンとの連携をターゲットにしたツールキットを作ってしまえばよい。そんな発想でツールキットを“再定義”し、開発されたのがユカイ工学の「konashi」である。konashiはスマートフォンの入出力を無線で拡張できるマイコンボードだ。konashiの開発者である東京大学先端科学技術研究センター特任研究員の松村礼央氏は、「当初からスマートフォンをターゲットにしたツールキットが必要だと思い、幅広く使ってもらうため、開発言語もObjective-Cだけでなく、Web系で使われるJavaScriptでも開発できるようにした」と述べる。

 konashiはBluetooth規格の超低消費電力版仕様「Bluetooth Low Energy」(BLE)を使ってスマートフォンと接続する。現状はBLEに対応しているiPhoneやiPadなどのiOS搭載機と連携する機器のプロトタイピングに利用するものだ(konashiを使ったスマホ連携ガジェットのプロタイピング記事)。Androidもバージョン4.3からBLEに対応予定であり、今後対象となるスマートフォンの数は飛躍的に増えていくことになる。

 こうしたツールキットによってスマートフォンと連携する周辺機器の開発ハードルはかなり低くなっている。新しいアイデアや斬新な発想も試しやすい。ソフトウエアエンジニア、ハードウエアエンジニア、デザイナー、プランナーといった異分野の人が協働し、今後スマートフォンの周辺で新たな“再定義”が続々と登場してくることが期待できる。そしていずれは、スマートフォンそのものも“再定義”されていくのだろう。

(大谷 晃司=ITpro)