ドイツ最高峰、ツヴィリング社の包丁は実は日本製?

ゾーリンゲンと関はそれぞれ、ライン川と長良川という大きな河川沿いに位置し、近世まで武器としての刀やナイフを生産してきたという、同じ歴史を背負っている
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 ドイツ中西部に位置するゾーリンゲンは、中世から刃物の町として知られてきた。かの地で製造されるツヴィリング社の包丁は、長らく、世界の最高峰として君臨している。しかし、現在ツヴィリングの包丁を支えているのは、実は、日本刀に端を発する、“日本の包丁”の技術なのだ。同社の包丁の生産の中心となっているのが、岐阜県・関にあるツヴィリング関工場だ。

 ツヴィリングの製品が、日本に上陸したのは40年前。当時はヘンケル(ツヴィリングの前社名)の包丁と言えば、百貨店の調理道具売り場では高嶺の花だった。しかし、その後数十年の間に、ツヴィリング社が日本の技術を認め、惚れ込み、ついには9年前に、岐阜県関市の工場を傘下に入れ、日本の技術を取り入れた生産ラインで包丁づくりを始めている。

 関市は、日本の包丁の51%が生産されている、まさに包丁の聖地だ。しかし、それだけの生産量を誇りながら、これまでは分業が主。刃を作る工程、磨く工程、柄を接合する工程……と、それぞれ小規模の工場で分業され、1本の包丁が作られてきた。一貫生産ではないため、それぞれの工場の能力がいくら高くとも、トータルな品質向上のための研究などが難しかった。

 しかし、ドイツのツヴィリング社では、一貫生産が基本。トータルな品質管理で、レベルアップを目指す。その考え方を体現したのが、関工場なのである。

 包丁製造の工程は、簡単には、鋼材の加工、プレス、熱処理、冷却、研磨、組み立て、刃付け、仕上げとなる。ツヴィリング関工場では、技術力の要する熱処理から仕上げまでの過程を、日本の職人の技術と、ドイツ本社からの機械の導入などによる、日独のいいとこどりで行っているのである。

包丁の原型を1000℃以上の窯で過熱処理し、マイナス196℃の窒素ガスで急速冷却。ダマスカス模様の製品はここで再び窯に入れ、紋様を形成する。そのあと、金槌で叩いて、歪みなどを矯正、ハンドルを溶接・研磨、本刃づけの水研磨という工程で作られる
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