人気の秘密は「3回味が変わる」!?

 淡路島カレーの最大の特徴は、1皿に淡路島産タマネギが丸々1個分使われていることだ。同社がこの特色のあるカレーを開発した直接のきっかけは、2011年の東日本大震災だという。

 そもそも同社は、地方のユニークな事業を全国的なフランチャイズブランドに育成して上場させる手法で有名なコンサルタント会社「ベンチャー・リンク」の出身者が独立して設立したコンサルティング会社だ。「コンサル以外にもうひとつ柱となる事業がほしい」と考え、4年前から移動販売車によるフード事業を開始。カレーはそのメニューのひとつで、大阪で人気のあった「アイリッシュカレー」のルーを使用。さらにこのルーの仕入れ販売を行い、代理導入店舗も都内で8店舗まで拡大していた。さらに導入店舗を増やそうとしていた矢先に、東日本大震災が起こったという。

 代表の大山氏はこの震災直後、順調に伸びていたアイリッシュカレー事業から撤退する。「終戦後の疲弊した日本を元気づけたのは、ソニーや松下といった新進企業だった。自分たちも企業として危機的な状況にある日本のために何かできないか」「同じカレーを売るのでも、日本を元気にできる、地方活性に役立つようなカレーを売りたい」と考えるようになったという。同社が新たに目指したのは“地都協業”(地方の物づくりのプロと、都市の売り方のプロによる協業)という理念だった。

 それを実現させるために大山氏が着目したのは、カレーの食材として特に重要なタマネギ。淡路島産タマネギはほかのタマネギと比較すると糖度が2倍以上で、苦味が少ないという大きな特色がある。その淡路島産タマネギを使うことでカレーのブランディングができ、同時に地都協業もできると考えた。

 実際にカレーを開発するにあたり、同社スタッフは全国の評判になっているカレー店を回り、200店以上を食べ歩いた。その結果、「何度も繰り返し食べたくなるカレーは味が2段階に変化する」という法則を発見。そこで「3段階に変化したらもっと売れる」と考え、食べ進むごとに味が変化するように開発したのが淡路島カレーだ。

 淡路島カレーは食べ始めにまずタマネギとフルーツの「甘さ」、次に鶏ガラスープとデミグラスソースの「コク」、最後に唐辛子と16種類のスパイスの「辛さ」を感じるのが特徴。この複雑な味わいにハマる人が多く、じわじわとファンを増やし続けているのだ。

“地都協業”に共感、タマネギの地元がバックアップ

 しかし実際に全国の店舗でカレーを提供するには、冷凍パックにして量産できる工場が必要だ。全国100カ所以上の工場に問い合わせたが、開発した淡路島カレーのレシピがあまりに複雑なため、どこも引き受けてくれなかったという。

 救いの手をさしのべたのが、同社が掲げる地都協業という理念に共鳴したNPO法人「淡路島活性化推進委員会」の会員である沖物産(兵庫県淡路市)。「『淡路島活性化のためなら』と、利益を度外視して職人や生産ラインを割り振ってくれた」(大山氏)。原料のタマネギの調達も、淡路島活性化推進委員会の助力により道が開けたという。

 一般的に農作物は需要と供給のバランスで価格が大きく上下するが、同社では毎年決めた量のタマネギを定価で買い取っている。カレーに使用するのであれば、形や大きさが規格外で売りづらいタマネギでも問題ない。これらの農家に有利な買い取り条件も功を奏し、一定量のタマネギの確保に成功した。

 こうして同社では、震災から半年後の2011年11月に早くも「淡路島カレー」の量産に成功。同年12月に「東京ビジネス・サミット」に出展し、優秀賞を受賞。商談会で知名度を上げたことで、以降は毎月4~5店舗のペースで導入店舗を増やし続けている。「当初は工場の採算をとるため、2年間で50店に増やす約束だったが、実際には1年3カ月程度でその目標をクリアした」(大山氏)というほどのスピード成長だ。

人気の淡路島産タマネギのなかでも特に糖度が高いものだけを使用。「もみじ3号」「ターザン」など時季によって最適な品種を選んでいるという
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契約農家から直送されたタマネギはソテー工場で4時間かけて炒められ、カレー工場で9種類のフルーツ、16種類のスパイス、鶏ガラスープ、デミグラスソースとともにブレンドされる
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