小林製薬の「精油」に対し、エステーは「精水」を使用

 エステーの「消臭力 優しい森」は北海道のトドマツから抽出した「100%天然樹木水」を配合した消臭芳香剤(ただし消臭成分、香料など天然樹木水以外の成分も使用している)。天然樹木水は間伐材の枝葉から抽出した機能性樹木抽出液を精油(油分)と精水(水分)に分けたときの精水部分。小林製薬が木の「精油」を使用しているのに対して、こちらは木の「精水」を使用しているわけだ。

 この精水には新鮮で爽やかな香りの「青葉アルコール」、清涼感のある香りの「ボルネオール」が含まれ、消臭効果もあるのが特徴。森林浴のような爽快感や清涼感をもたらす成分なのだという。「消臭芳香剤についてグループインタビューをすると、多くの人が化学的なイメージを抱いている。ノンシリコンシャンプーが売れているように、今はナチュラル志向が強く、天然なものを求める人が増えている」(エステー マーケティンググループの角田武史リーダー)

 この成分が生まれたのは、同社が2007年にグループ会社である「日本かおり研究所」、独立行政法人の「森林総合研究所」と共同で森林資源を有効活用する研究開発を開始したことがきっかけ。そこでトドマツの葉に含まれる精油ガスがNO2の除去と抗酸化に高い効果があることが分かった。そこで、これまで森林整備事業時に大量に破棄されていた北海道モミの間伐残材(枝や葉)から液を効率的に抽出する技術を構築。間伐残材を有効利用して森林を守りつつ、その抽出物で消臭芳香剤を作る一石二鳥の技術といえる。

天然樹木水は間伐材の枝葉から抽出した機能性樹木抽出液を精油(油分)と精水(水分)に分けたときの精水部分
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ノーベル賞級の研究だった!?

 エステーではこの「機能性樹木抽出液」を多方面で活用するための新事業として「クリアフォレスト」という技術ブランドを立ち上げた。「消臭力 優しい森」はこの事業の消臭芳香剤としての第1弾となる。この事業は科学技術振興機構から研究開発費の援助を受けている。ちなみにノーベル賞を受賞したあの山中伸弥教授も2003年に同団体から研究開発費の援助を受け、ノーベル賞を受賞したそうだ。

 研究着手から商品発売まで6年もかかったのは、次の3つの大きな課題を解決しなければならなかったからだ。

 (1)大量に放置されていた森林残材の効率的な搬送システムの確立
 (2)「機能性樹木抽出液」を抽出するための装置開発
 (3)この成分を活用できる商品を作ること。

 特に重要だったのが(2)の装置開発。これまでは精油を抽出するのに100度以上の水蒸気で蒸していたが、高い熱が加わると精油成分が劣化しやすいし、抽出できる量も限られる。事業として成立させるためには低価格で提供できる商品を量産しなければならず、それには効率的に抽出することが不可欠だったのだ。

「省エネルギー型抽出機『マイクロ波減圧コントロール抽出装置』の開発により、抽出時間を短縮するとともに、高品質な成分の抽出が可能となった」(エステー広報部の高橋郁江氏)。この装置はいわば電子レンジのようなもので、バランスの良い温度で抽出することで質の良い成分が得られるという
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