立ち飲みバルなど、食のトレンド発信地としても注目のエリア・恵比寿で新しい動きが起こっている。2013年6月1日から9月4日(クジラの日)までの約3カ月間、「恵比寿鯨祭(げいさい)」が開催され、地元の飲食店21店舗がクジラ肉を使ったメニューを提供しているのだ。

 「なぜ恵比寿でクジラ?」という疑問が浮かぶが、実はクジラは古来、七福神の一柱で漁業の神とされる「恵比寿様」と同一視され、日本各地でクジラを「えびす」と呼びならわしてきた歴史があるという。

 2013年5月30日に開催された発表会では、まず恵比寿鯨祭実行委員長の古井貴氏が挨拶。クジラ祭り開催のそもそもの発端は2011年の大震災後、地元の小学生の親が中心の団体「おやじの会」が発足したことだという。古井氏を含め、どちらかというと地元意識が希薄だった恵比寿住民だったが、「有事の際に子供と離ればなれになったら、地域の人々との連携が必要」という再認識が生まれたためだった。この会を通じ、新しい地元民のコミュニティが誕生。「恵比寿のために何かしたい」と考えるようになり、恵比寿という地名がクジラとゆかりが深いことが分かった。

 そこで「地元のみんなでクジラをテーマに街おこしができないか」とフードフェスティバルを企画。「恵比寿の新名物となるクジラメニューを作ってほしい」という呼びかけに応え、21店が協賛店となった。「どれも恵比寿の地元の人に本当に愛されているお店ばかり。この祭りを通じてクジラの新しい魅力や歴史的背景を伝えていきたい。目黒のさんま祭に次ぐ『恵比寿の鯨祭』を目指す」(古井氏)。

 またクジラ祭りといえば宮城県石巻市の「牡鹿鯨まつり」が有名だが、大震災以降、中止されたままになっている。恵比寿鯨祭開催中は、協賛店をはじめさまざまな場所で募金活動を行い、石巻牡鹿の観光協会を通じて送って「牡鹿鯨まつり」復活のために使ってもらいたいと考えている。

クジラ料理の新メニューが捕鯨問題解決の糸口に!?

 続いて登壇したのは、水産庁捕鯨担当調査官 佐々木拓氏。「今、捕鯨関係者や地方自治体、超党派の議員などが力を合わせ、国際交渉の場でクジラ外交を繰り広げている。調査捕鯨で得たデータや国際条約をもとに粘り強く交渉を続けているが、やはり一番心強いのはクジラを愛する国民の皆さんの気持ち。その意味で今回の鯨祭に心から感謝したい」(佐々木氏)。

 反捕鯨を唱えている国の中には、過去に脂を取るためにだけ捕鯨をし、クジラを石油や天然ガスと同じ視点でとらえてきた歴史を持つ国も多い。しかし日本では縄文時代から、クジラを海の恵みをもたらすすばらしい生き物として、また貴重な食材として感謝をしながら有効に活用してきた。鯨祭では従来の鯨肉料理のイメージを一新する料理を提供する店が多いが、「そうした新しい調理法で欧米の人々にもクジラのおいしさを知ってほしい」(佐々木氏)という。

水産庁捕鯨担当調査官 佐々木拓氏。「鯨祭の成功がクジラをめぐるさまざまな問題を解決する糸口になってほしい」