久しぶりに東京の電車に乗り、あることに気付いた。ニューヨークの地下鉄内で見慣れている「あるモノ」が東京ではほとんど見かけられない。
そのあるモノとは、ずばり電子書籍だ。
ニューヨークでは電子書籍の揺籃期(ようらんき)は過ぎ、今まさに発展期を迎えている。太陽光の下でも快適に読書が可能で、バッテリーが長時間の読書にも耐える電子ペーパー式電子書籍。一方、フルカラーで動画再生やインターネット、メール機能も備えたタブレット型電子書籍も販売台数を伸ばしている。利用者の生活スタイルに合わせて、持ち歩く電子書籍の選択肢にも幅が出てきた。
アメリカ出版社協会によれば、米国内における2012年度の電子書籍の売り上げは、書籍全体の22.55%。全米で売れた書籍数の約4分の1を占めたという。
その中でも最も売り上げを伸ばしたジャンルは児童向け電子書籍で、前年比より120%もアップ。一般電子書籍の売り上げも同様に前年から大幅に上昇したという。米国内では、家族単位で電子書籍の利用が浸透しているようだ。
ニューヨークでは、今年の市長選で最有力候補とされているクリスティン・クイン市議会議長が、ニューヨーク市における公立学校の教科書を全てタブレット化する案を発表。教科書のタブレット化は長期的に見て市の予算減につながるだけでなく、情報化に強い教育を提供することにもなる。
しかし2007年末に、米アマゾン社から電子書籍端末「Kindle」が発売された際は、現在の日本の状況ととても似通っていた。「電子書籍」という新形態に人々は困惑し、”紙か電子か?”といった見出しが連日ニュースを賑わせた。そして周囲もまた、興味はありつつも、電子書籍への最初の一歩の踏み出し方がわからず、様子見で留まっている人が大半だったように思う。
ではなぜ米国で、電子書籍市場がこんなにも成長を遂げたのか?