若者たちが潜在的に「寺山」に親しみを抱く理由

 今年開場40周年を迎えたパルコ劇場は、記念事業の目玉の一つとしてテラヤマの「レミング」を選んだが、劇場の田中希世子プロデューサーによると、このチョイスは自然なものだったようだ。パルコ劇場では寺山の生前からその作品を上演し、死後も美輪明宏主演の「毛皮のマリー」など、寺山作品をしばしば上演。その都度話題を呼び、いわば劇場の「鉄板」レパートリーとなっているのだ。

八嶋智人、片桐仁、常盤貴子、松重豊ら個性的なキャストが集う「レミング」。4月21日~5月16日パルコ劇場、(http://www.parco-play.com) その後名古屋、大阪公演あり

 「その言葉の美しさとともに、内容的にも、時代が変わっても色あせない新鮮さが、寺山さんの作品にはあります。今回の『レミング』も、一つの都市論として、今の若者たちに刺激的に映ると確信しています」と田中氏は言う。

 作品のタイムレスな魅力こそが、寺山人気の核にあることは間違いないだろう。だが、多くの人々がそれに気づくきっかけとして、実は「教科書」という存在が大きいのではないか、と前出の笹目氏は推測する。今の若い世代が中学、高校時代に使った国語の教科書のほとんどに、寺山の短歌が掲載されているというのだ。

 「リアルタイムで知っている世代にとっては、寺山修司は前衛演劇の人という印象が強いかもしれませんが、短歌・俳句における彼の言葉は抜群にキレがよく、分かりやすい。しかも、そこに書かれているのは時代を超えて日本人が共有する、故郷であったり母に対する思い。こうした理由で、『マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや』などの短歌作品が、今や現代短歌の代表として多くの教科書に載っています。それらに触れて育った今の若者たちの中に、寺山に対する潜在的な親しみが、知らず知らず育っているようなんです」

 それが、ちょっとしたきっかけで呼びさまされる。

 『アメトーク』でスピードワゴンの小沢一敬が寺山のエッセイ『ポケットに名言を』に言及すればアマゾンで即、売り切れ、たちまち5000部増刷。

 嵐の松本潤が寺山の舞台『あゝ、荒野』に主演した際には、公演告知がスタートするなり、これもたちまち増刷。

 ロックバンド、サカナクションのボーカル、山口一郎らミュージシャンにもテラヤマ好きは少なくなく、彼らのコメントもまた寺山の作品が読まれるきっかけとなっているそうだ。「『それってテラヤマっぽい』という表現が、若者層にはあるそうです。何だかよくわからないけど、かっこいい。それが寺山の映像作品だとか、具体的な作品に触れることで、原宿の女の子たちのように模倣したくなったり、仲間たちにツイートしたくなったりするようなんです」と笹目氏。

 その「かっこよさ」をすくい取り、インパクトのある広告を作り上げたのが先だってのタワーレコードであり、郷愁を誘う「テラヤマ」をサキイカに重ね合わせて成功したのが「家出のするめ」だったということだろう。