いま「ご飯を美味しく炊きたい」というトレンドが来ている。東日本大震災以降、家族の絆が重視され、内食回帰の傾向が強まっている。この背景に加えて「土鍋ご飯」もブームになっている。「土鍋で炊いたご飯は美味しい」という評判は数年前から広まり、現在は、内食だけでなく料理店や居酒屋など、外食でも「土鍋ご飯」が人気メニューとなっている。

 お米の質と味の向上もこのトレンドに寄与している。古くは新潟県産「コシヒカリ」や宮城県産「ササニシキ」、最近では熊本県産「森のくまさん」や北海道産「ゆめぴりか」など、品種や産地が特定された「ブランド米」の拡充により、「お米を選んで、ご飯をもっと美味しく炊く」という意識は浸透してきた。

 ここ数年、こうしたニーズに応えて家電メーカーなどがこぞって高級炊飯器を市場に投入している。この競争状態のなかに、ガスを使った家庭用炊飯器の新製品が21年ぶりにフルモデルチェンジして登場してきた。2012年10月、ガス会社の東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、ガス製品の開発・製造会社のリンナイの4社が共同開発したのが、ガス炊飯器「直火匠(じかびのたくみ)」だ。節電意識の高まりもあり、発売以来品薄となり「想定以上のヒット」(大阪ガス)となっている。

 釜の材質や形状の工夫でしのぎを削る電気炊飯器に対して、「ガス火でご飯を炊く」という方式の違いは、炊きあがりにどんな違いを生み、どんな競争力があるのか。開発者に取材した。

ガス炊飯器「直火匠」。「本焚白米モード」とちらし寿司などにも合うご飯が炊きあがる「白米モード」を持つ。蒸らしも含め約28分で炊き上げる「白米急ぎモード」や「おかゆモード」「炊き込みモード」「玄米モード」などがある
[画像のクリックで拡大表示]
大阪ガス リビング事業部 商品技術開発部 リビング商品開発チーム 調理・暖房グループの正田一貴課長

 直火匠は21年ぶりにフルモデルチェンジして登場したガス炊飯器だ。以前の機種開発にも携わり、今回の開発チーフを務めた大阪ガス リビング事業部 商品技術開発部 リビング商品開発チーム 調理・暖房グループの正田一貴課長は言う。「今回の開発の目標は、あくまでも、お米の美味しさを最大限に引き出すことでした」。ご飯の美味しさを「甘み」「粘り」「香り」の3つの要素に分けて、これらを引き出す最適化した炊き方をガスで制御することを目指した。

 「はじめチョロチョロ なかパッパ ジュージュー吹いたら火を引いて 赤子泣いてもふた取るな」

 この昔ながらのご飯のかまど炊きの火加減の調整法こそ、美味しいご飯を炊く基本だと正田氏は言う。「はじめチョロチョロ」で「弱火でお米に水分を浸透させる」。「なかパッパ」で「強火で加熱して炊く」。「ジュージュー吹いたら火を引いて」は「火を弱め、うまみを引き出す」、「赤子泣いてもふたとるな」は「蒸らしておいしさを閉じ込める」ことに相当する。

 この「かまど炊き」の理想的な火加減は、22年前の開発目標でもあった。1989年4月、大阪ガスに入社した正田氏は、研修期間を終えるとすぐ、ガス炊飯器の開発に携わることになった。