この記事は「日経トレンディ2013年3月号(2月4日発売)」から転載したものです。内容は基本的に発売日時点のものとなります。

 熊本県の“営業部長”として活躍する「くまモン」や愛媛県今治市の「バリィさん」など、ゆるキャラを使った地方自治体のPRが人気。一方で、強力なゆるキャラを持たない県がこぞって始めたのが、クスッと笑える「すべらないコピー」を前面に打ち出し、お堅い役所のイメージを覆すネット動画で県産品や観光地を売り込む新手法だ。

 「このたび、香川県は『うどん県』に改名いたします」――。香川県出身の俳優、要潤が登場するネット動画が県のホームページに登場したのは、11年10月。この大胆な“改名宣言”がネット上で話題になり、特設ページへのアクセスが2日間で21万件と、県のサーバーが一時ダウンするほど集中した。

 動画を制作した地元企業アクシスの山地徹氏は、「うどん県という呼び名は、もともと2ちゃんねるなどで香川県を指すネット用語。これを使ってインパクトのある映像を作ればネットで受けると、県と話し合った」という。

 香川県は過去に、「『高松県』なんて言わないで」とお願いする自虐コピーを採用したこともあるが、今回はストレートに県内ナンバーワンブランドの讃岐うどんをネタにした。誰もが思っていることを当事者が声高に言う、「開き直り」が受けた形だ。香川県観光振興課の小坂吉邦課長補佐は、「県が率先して殻を破り、メインコピーも『うどん県。それだけじゃない香川県』と続けたことで、県下の市町村などが便乗しやすくなった」と話す。

 実際に、ご当地グルメの骨付鳥をアピールしたい丸亀市は「骨付鳥市」、うどんのダシに使われるいりこが特産の観音寺市は「いりこだ市」、手袋の出荷額で日本一の東かがわ市が「てぶくろ市」と、うどん県のパロディ企画が続々立ち上がったのは面白い動きだ。

 「うどん県。それだけじゃない香川県」
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 うどん県のPR動画が発表された会場には、食関連のカリスマブロガーも参加。「彼女らの発信力の強さも手伝い、話題に火が付いた」(PR会社TMオフィスの殿村美樹社長)。その後は、うどん県関連グッズを民間企業が売り出すなど、一気にブーム化した。

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香川県が昨年6月に発行した「うどん県パスポート」。県内観光地を巡るスタンプラリーや飲食店の割引券などが付く
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●「それだけじゃない」部分をアピール
香川県は讃岐うどん以外の魅力を打ち出す企画も展開。昨年は「うどん県=アート県」としてイベントを実施した
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●PR動画で県外の“大物”をおもてなし
2012年11月に新作を公開。香川に縁のなかった加藤茶が登場し、要潤を筆頭に「うどん県民」が出迎える内容だ
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●県内でパロディ企画の連鎖
うどん県の人気に便乗して丸亀市は「骨付鳥市」に“改名”。東かがわ市の日本手袋工業組合などは「てぶくろ市」と打ち出している
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