スマホや一眼にはない機能や装備で、新たなマーケットを創出したい

 国内や海外で積極的にコンパクトデジカメの新製品を投入しているカシオ計算機だが、デジタル一眼なしで今後どのような戦略を取っていくのだろうか?

 金田氏は「コンパクトデジカメ事業は、スマートフォンとミラーレス一眼の台頭に対抗するのがまず課題といえる。カシオとしては、これらの機器では実現できていない独自の撮影機能やサクサク感、使い勝手のよさを備えたデジカメを投入することで、どのようなシチュエーションでも狙い通りの写真が得られる喜びや満足感を提供したい」と話す。スマホやミラーレス一眼にはない撮影機能や装備で差異化を図る考えだ。シャッターを押す0.8秒前にさかのぼって記録できる「パスト連写」や、わずかな光しかない状況でも連写で明るく写し出す「HSナイトショット」など、すでにHIGH SPEED EXILIMで搭載している独自機能を前面に押し出す。

 コンパクトデジカメのマーケットの縮小への取り組みも、課題の1つだと指摘した。金田氏は「新しいマーケットを作り上げるには、既存のカメラの形にとらわれる必要はない」と述べた。

 その言葉で連想されるのが、現在のコンパクトデジカメの先祖ともいえる同社の「QV-10」だ。撮影した写真を背面の液晶モニターですぐに再生でき、回転式のレンズで自分撮りが楽しめるなど、それまでのフィルムカメラの常識にとらわれない機能や装備が高く評価され、新しい画像入力ツールとして広く受け入れられた。カシオ計算機は、QV-10で打破したカメラの固定観念を、QV-10の成功体験を基にもう一度打ち破ろうとしている。

カシオ計算機が1995年3月に発売した、デジカメの先祖ともいえる「QV-10」(写真は改良版のQV-10A)。回転式のレンズや液晶モニターなど、ユニークな装備が「カシオらしい」と評された
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 その試金石ともいえるのが、異端児だと思われたTRシリーズだ。「1200万画素でレンズは単焦点と、最新デジカメとして見ればスペック的には平凡以下だ。だが、独自のスタイルで“自分撮りが手軽できれい”という新カテゴリーを作り上げ、デジカメに興味のなかった層を取り込むことに成功した」と、日本では不発に終わったかに見えたTRシリーズの功績を強調する。

TRシリーズの初代モデル「EX-TR100」。回転式の液晶モニターやレンズなど、QV-10を現代版にリファインしたモデルという印象を受ける
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 金田氏は「カシオのDNAを生かせる製品を鋭意開発している。『カシオは何かやる!』と期待してほしい」と語った。デジカメ市場を切り拓いたQV-10や、停滞するデジカメ市場に新たな風を巻き起こしたTRシリーズなどへの“先祖返り”の発想も新製品開発のカギを握るのかもしれない。2013年1月初旬に米国で開催される「2013 International CES」での発表に注目したい。

(文/磯 修=日経トレンディネット)