カシオ計算機 QV・DI戦略部長の金田公一氏。国内のデジタルカメラ戦略について聞いた
[画像のクリックで拡大表示]

 高性能化が進むスマートフォンの好調ぶりを受け、コンパクトデジカメ市場が急速に縮小している。BCNが2012年11月に発表した統計では、過去4年間を通して見ても、販売台数や平均単価、販売金額が過去最低の水準で推移している。比較的好調な高級コンパクトデジカメを除き、「コンパクトデジカメは作っても売れない、売るためには価格を下げざるを得ない」という悪循環に陥っていることが分かる。

 そのようななか、注目されるのがカシオ計算機の動向だ。同社は、国内の主要なデジカメメーカーでは唯一、レンズ交換式のデジタル一眼市場に参入していない。写真ファンを中心に、「これだけブームになっているのだから、カシオもそのうちデジタル一眼に参入するだろう」「カシオが作った一眼を見てみたい」と考える人も少なくない。

 だが、カシオ計算機が2012年11月9日に発売したコンパクトデジカメ「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR1000」の発表会において、デジタルカメラ事業を統轄する責任者が「カシオはレンズ交換式のデジタル一眼はやらない。コンパクトデジカメ一本でいく」と断言し、話題になった。厳しさを増すデジタルカメラ市場において、一眼なしでどのように勝負していくのか。カシオ計算機の担当者に取材した。

主力に据えたHIGH SPEED EXILIMは高評価、今後ラインアップはさらに拡充する

 カシオ計算機のコンパクトデジカメは、価格やデザインを重視したオーソドックスな「EXILIM」シリーズと、高速連写を利用した高画質化機能や特殊撮影機能を備えた「HIGH SPEED EXILIM」シリーズの2本柱でラインアップを構成している。以前はEXILIMシリーズが売れ筋だったが、現在はHIGH SPEED EXILIMシリーズに主力が移行。「デジタルならではの技術でデジカメの楽しさや可能性を広げる」ことを訴求している。

 価格.comのコンパクトデジカメの満足度ランキングでは、2012年6月発売の「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR300」が1位、2012年3月発売の「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR20」が5位と、ベスト5にHIGH SPEED EXILIMシリーズが2機種もランクインしている。いずれも、コンパクトデジカメとしては価格帯が高いものの、購入者の満足度が高いことが分かった。広報担当者によると、2012年2月にテレビ番組「ほこ×たて」内で従来モデル「EX-ZR200」の速写性能が紹介されて反響を呼んだことも、HIGH SPEED EXILIMの知名度や人気を押し上げた要因になったという。

2012年6月に発売した光学12.5倍ズームの「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR300」
[画像のクリックで拡大表示]
2012年3月に発売した光学8倍ズームの「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR20」
[画像のクリックで拡大表示]

 2012年11月に発売したEX-ZR1000は、HIGH SPEED EXILIMの最上位モデルだ。シリーズで初めて、背面の液晶モニターを可動式としたうえで、表示部をレンズと同じ向きにしての自分撮りを可能にした。三脚がなくてもカメラを斜めに立てた状態で固定するスタンドも内蔵し、カメラを手で持たなくても自分撮りが楽しめる工夫も凝らした。高速連写を利用した暗闇撮影機能や手持ち夜景撮影機能、素早い動きをスローの動画で捕らえるハイスピードムービーなど、シリーズで定評のある機能を継承している。

2012年11月に発売した最新モデル「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR1000」。背面の可動式液晶モニターの可動範囲を広げ、表示部をレンズと同じ向きにすることで、片手で自分撮りができるようにした
[画像のクリックで拡大表示]

 国内のマーケティングを担当するQV・DI戦略部長の金田公一氏は、「EX-ZR1000は、サクサク撮れて再生もスピーディー、ストレスを感じずに使える。いかにもカシオらしい機種に仕上がった。既存モデルや競合モデルと比べて価格は1万円ほど高いが、“サクサク感”を中心に販売店からの評価は良好だ」と語る。

 金田氏は「年末年始の目玉は高性能タイプのEX-ZR1000だが、HIGH SPEED EXILIMシリーズのラインアップは今後積極的に拡充していく。さまざまなユーザーの需要に応えるモデルを投入することで、シェアを高めたい」と語った。逆に、従来のEXILIMシリーズは、性能ではなくデザイン面で差異化を図る方針。「低価格のコンパクトデジカメは、機能面での差異化が難しくなった。ズーム倍率が5倍だ、10倍だといっても、多くの消費者には響かない。特徴的なデザインで違いを見せるしかない。現在、日本では『カメラ女子=ミラーレス一眼』というイメージが強いが、その意識が変わるような製品をコンパクトデジカメで投入していく」(金田氏)。