流通ジャーナリストとしてテレビ番組に多数出演し、お茶の間でもおなじみだった金子哲雄氏が、肺カルチノイドのため41歳の若さで亡くなったニュースに驚いた方は多いだろう。その後のニュースで金子氏が通夜・告別式をはじめ、墓などの準備を全て生前に自分自身で手配していたことが報じられ、大きな話題になっている。

 金子氏の通夜の様子はワイドショーなどで大きく取り上げられた。遺影は好きなオレンジ色のメガネフレームとネクタイを着用したものを自身で用意。葬儀会場は大好きだった東京タワーが見える港区の心光院を指定、会葬者への仕出しの内容まで細かく注文していたという。

 金子氏のように「自分らしいこだわりを反映した葬儀をしたい」と考え、自分で生前に準備をする人が増えている。保管に場所をとらないので事前購入に便利な「ワンタッチ組立式棺」を販売している葬儀用品販売サイト「冠婚葬祭研究所」によると、購入者の約4分の1が自分の葬式用に注文しているそうだ。尊厳ある死と葬送の実現を目指す市民団体「エンディングセンター」の井上治代理事長は「家族だけを頼れない時代。だからこそ自分で自分の最期のことを準備する『終活』が注目されている」という。

 日本初の喪主向け葬儀実用誌「フリースタイルなお別れざっし~葬~」奥山晶子編集長は、2012年8月に出版した「葬式プランナーまどかのお弔いファイル」(文藝春秋刊)の中で、生前に自分自身で手配を整える葬儀スタイルを「スタンバイ葬」と名付け紹介している。奥山氏によると、スタンバイ葬には多くのメリットがあるという。

「ワンタッチ組立式棺(棺桶)布張りホワイト」1万9800円。棺内用布団が無料でセットされている。通常の棺と全く同じもので、強度は問題ないという
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「スタンバイ葬」のメリットとは?

(1)ゆっくり時間をかけて内容を検討できる
 結婚式は何カ月もかけて準備をするのに、葬式は亡くなってから1~2日で何もかも決めなければならない。突然の死だとショックで何も考える余裕がなく、葬儀会社の言いなりになって後で後悔することも少なくない。しかし本人が元気なうちに時間の余裕をもって手配をするスタンバイ葬なら、じっくり調べて自分らしい取捨選択ができる。

(2)葬儀費用の総額が生きているうちに分かる
 予算が分かれば、備えておくこともできる。予想以上にお金がかかって残された家族が苦労をするのでは、というような心配がない。

(3)自分がやりたいようにできる
 亡くなった後では自分が口を出せず、全て遺族に一任するしかない。しかし生前に手配を整えておけば、自分流にプロデュースできる。無宗教の人なら生演奏で見送る「音楽葬」、お焼香や献花ではなく、キャンドルに参列者が火を灯す「キャンドル葬」にしたり、趣味の展示コーナーを設けたりなど、自分らしいスタイルのお別れができる。

「葬式プランナーまどかのお弔いファイル」(奥山晶子著、文藝春秋刊、1155円)。9つの葬儀例をストーリー仕立てで紹介。老齢の華道講師が「元気なうちに自分で準備したい」と決意する「スタンバイ葬」は第2話に登場する
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