「エデンの東」のような大河作品が描きたかった

10月から初のテレビアニメ化。1部の「ファントムブラッド」を舞台に、主人公のジョナサン・ジョースターと、強敵のディオ・ブランドーの成長と対決の物語が描かれる (C)荒木飛呂彦/集英社・ジョジョの奇妙な冒険製作委員会

編集部:荒木先生のマンガ家としてのキャリアは、「武装ポーカー」でデビューし、「魔少年ビーティー」「バオー来訪者」といった連載作品を発表したうえで「ジョジョの奇妙な冒険」の連載につながるわけですが、初期の作品を今振り返ってみていかがですか。

荒木飛呂彦氏(以下、荒木氏):マンガにはストーリーと絵の大きく2つの要素があるんですが、当初から意識していたのは、これまで読んだことがない新しいストーリーを作ろうということ。当時の「週刊少年ジャンプ」編集部の方針も何かそういう空気があって、「王道のスポーツ漫画なんか描いてきたらボツにするよ」というような(笑)。

 ストーリーとしては、「エデンの東」のような大河ドラマや、子供の時から好きで読んでいる「シャーロック・ホームズ」やホラー短編集を、自分なりにすごく分析して作りました。ストーリーが綿密に組み立てられて、何らかの伏線があってオチに向かっていくというような。「武装ポーカー」の時代から、ストーリーにこだわって、すごく冒険的に作ってきた感じはありますね。

 ただ絵の方が、「これだ!」と思うものになかなかたどり着けなかった。一流のマンガ家さんって、一目見て、その人だと分かる絵を描くんですよ。ちばてつや先生しかり、手塚治虫先生しかり。他の人がマネできない絵というのが絶対的にあって、自分もそういうものを確立できるのか、「ジョジョの奇妙な冒険」を描くまでは迷っていたんですね。

編集部:「ジョジョの奇妙な冒険」の連載が始まる前、初めてヨーロッパ旅行に行かれたそうですね。そこで、絵の面で開眼した部分はありますか。

荒木氏:そう、日本でもヨーロッパの芸術作品は写真などで見ていたんですけど、実物には写真では伝わらないアイデアがいっぱい入っていたり、すごく感動したんですよね。雑誌などの写真で見るのとは全く違うインプットがあった。特にイタリアで見た宗教画やフレスコ画というのは、写真で見ると古典作品としか感じなかったけど、実際に見ると斬新だし、何かもう圧倒されてしまって。この辺から学んでいけば、自分の絵の道が開けるのかなと思いました。

編集部:「ジョジョの奇妙な冒険」は、主人公の家系図に重要な意味を持たせた作品です。連載が始まったときに、第1部~第3部までの構想があったということですが。

荒木氏:誰にも言わなかったですけど、心の中にはありましたね。ジャンプは連載の人気が出なければすぐ終わる厳しい世界ですけど、野心は持っていました。それこそ、「エデンの東」のように、世代が変わっていく話を核にできたらいいなと。あと、元々ホラー作品が好きなので、そうした要素も入れたかった。マンガ家って、例えば「ウルトラマンとガメラを戦わせたらどっちが強いか」といった究極の選択をよく考えるんですけど、それと同じように「一番怖いことって何か」考えたら、先祖の代からの恨みで襲われることかなと。自分にはまったく身に覚えがないのに、呪いじゃないけど自分を追ってくるみたいな。

10月から初のテレビアニメ化。1部の「ファントムブラッド」を舞台に、主人公のジョナサン・ジョースターと、強敵のディオ・ブランドーの成長と対決の物語が描かれる (C)荒木飛呂彦/集英社・ジョジョの奇妙な冒険製作委員会