世界的に活躍するジャズピアニスト、上原ひろみが日本で注目されたのは、今から9年前に、テレビ番組で取り上げられてからのことだ。当時、23歳。その年、2003年の春にアルバム『Another Mind』で世界デビューしたばかりではあったが、名だたるミュージシャンとの共演をはじめ、すでにキャリアは積んでいた。それでも、日本では、ほぼ初めて彼女のプレーに触れる人が多かったこともあり、彼女のパフォーマンスや音楽性、そして話をするときの柔らかでかわいらしい姿とのギャップは、瞬く間に話題となった。
 そのキャラクターも相まって、数年前まで上原ひろみのファンは、どちらかというと男性が多い印象があったが、今では彼女の生き方や考え方に共感する同世代の女性ファンも多いと聞く。
 そんな彼女が、2011年3月にリリースした上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトでのアルバム『VOICE』に続き、2012年9月5日にアルバム『MOVE』をリリース。これは、ロックバンドTOTOの伝説的なドラマーとしても知られるドラマー、サイモン・フィリップスと、不動のスーパーセッションベーシスト、アンソニー・ジャクソンとのプロジェクトで、『VOICE』の発表後、3人で続けてきたステージでの充実した日々が、新たな創作へとつながったことがひしひしと伝わってくる作品だ。
 しかし『VOICE』発表の直前には、東日本大震災が起きており、彼女もまた、その影響を、少なからず受けている。今、上原ひろみはどんな思いで音楽と向き合い、そして、世界に向かっていっているのか。
 話を聞いた。

上原ひろみ(うえはら・ひろみ)
1979年静岡県浜松市生まれ。6歳よりピアノを始め、同時にヤマハ音楽教室で作曲を学ぶ。17歳の時にチック・コリアと共演。1999年にボストンのバークリー音楽院に入学。在学中にジャズの名門テラークと契約し、2003年にアルバム『Another Mind』で世界デビュー。2008年にはチック・コリアとのアルバム『Duet』を発表。2010年はソロピアノ作品『Place to Be』がアマゾンのジャズチャートで1位を記録。2011年、スタンリー・クラークとのプロジェクト最新作『スタンリー・クラーク・バンド フィーチャリング 上原ひろみ』で第53回グラミー賞において「ベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバム」を受賞。世界を舞台に毎年約100日150公演のツアーを続けている。
 日本では2007年の平成18年度(第57回)芸術選奨文部科学大臣新人賞大衆芸能部門や、2008年「第50回日本レコード大賞優秀アルバム賞」を受賞。またDREAMS COME TRUE、矢野顕子らとの共演ライブも敢行。2012年はロックフェスにも出演。2012年9月5日、「上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス」の最新アルバム『MOVE』をリリース。11月からは日本ツアーも行う。

――上原さんの活動は、次々といろんなアーティストとコラボレーションをしたり、常に新たな挑戦するようなイメージがあります。このタイミングで、前作と同じメンバーと新たな作品をリリースすることになったのはなぜでしょうか。

上原ひろみ氏(以下、上原): 前作『VOICE』をリリースし、ツアーをする中で、同じトリオでアルバムを作りたいという思いが強くなり、曲を書きためた。それが完成した形です。私が同じメンバーと継続して活動したいと思うのは、ステージにおいて、自分で考えていた以上の化学反応が起きたとき。今回も、一緒に演奏し、チームメイトとしてお互いが生かしあえるパートナーだなという確信が持てたことが大きいですね。『VOICE』ツアーのステージによって「音楽って楽しい」と心から思えました。そこで起きる化学反応をもっと継続したいと思ったからこそ、今回の『MOVE』という作品につながりました。