しかし、この盛り上がりに値するほどの大成功をビジネス面で収めらているかというと、それはごく一部に留まる。

 放送や上映の規制もさることながら、リッタルディ氏は、日本が海外でJカルチャーをビジネス展開していく上で、いくつかクリアすべき課題があると考える。

 「日本は自国の文化を紹介したりマネタイズするのが、あまりうまくないと思います。海外の各マーケットに持ってくるのにあまりにも時間がかかっているので、海賊版が出回ってしまい、ニーズはあるのに、売り上げを思うように上げられない。例えば今回、大手アニメ制作会社が出展していますが、これは僕が出展の重要性を説明し続け、実現に至るまでに2年かかりました。

 3年前にKAZEは小学館・集英社グループの子会社VIZ Media Europe社に買収され(注)、これまでのフランス人主導から日本人主導に変わりました。ただ、フランスで日本のアニメなどを売る場合、日本からそのまま持ってくればいいというものではありません。売れる・売れないの判断から、提示の仕方までフランスの市場に合ったやり方も必要です。Japan Expoをはじめ、今まで日本のエンタテインメント作品を各国で広げてきたのは、その国の人たち、特に若い世代です。アニメをはじめ、日本のエンタテインメントを世界で拡販するにあたっての課題は、日本側で全てをコントロールするのではなく、フランスならフランスと、現地で慣れ親しんでいる人たちも入れて、市場開拓をしていくべきではないかと考えています」

KAZEはマンガのほか、日本人アーティストの音楽CDの販売も手がけている
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 5月末でKAZEを退社したリッタルディ氏は、KAZEに在籍していた当時に請け負っていた(映画配給会社)ティ・ジョイの仕事や、「友人でもある」(『おおかみ子どもの雨と雪』の)細田守監督の仕事をやり遂げ、今後は、「日本とフランスの文化の懸け橋になるような仕事をしていこうと考えている」と言う。

  日本経済の停滞が続くなか、「海外で稼ぐ」というのは、産業全体の課題。そのなかで、日本のエンタテインメント作品の評価は変わらず高く、“有望物件”であることは間違いない。そのポテンシャルをどう生かすか。それには、現地の“Jエンタが好き”という人の力を使いこなすかに、ヒントがあると言えそうだ。


注…小学館・集英社・小学館集英社プロダクションの子会社もあたる米VIZ Media社(本社・サンフランシスコ)の子会社が米VIZ Media Europe。
セドリック・リッタルディ氏。「GREEやDeNAなどオンラインゲーム会社の台頭が気になります。というのも、オンラインは、配給会社など仲介がいらなくなる。ユーザーと作り手が直にやり取りできるので、可能性があると考えるからです」

(文/平島綾子=日経エンタテインメント!)