※この記事は日経エンタテインメント!(7月号)の記事を転載したものです。購入はこちら

 最近、音楽アーティストは身近な存在であることがブレイクのカギといわれる。アイドル以外でも“会える”イベントを開催したり、ブログを頻繁に更新する人は多い。ライブでも、MCではプライベートの話をする人が大半だ。

 これとは正反対に表立った活動を一切せず、支持を広げてきたバンドがある。それが、青森県むつ市在住の秋田ひろむを中心とした「amazarashi(アマザラシ)」だ。

 アーティスト写真はイラストのみ。メディアにはほとんど出ず、雑誌のインタビューもメールでやりとりするという。5月からタワーレコードのキャンペーンのキャラクターに起用されるなど、音楽界ではすでに注目の存在だが、このポスターもイラストを合成した写真で登場。東京ではこれまで4回ライブを行っているが、いずれも“姿を見せずに”演奏した。

 彼らがデビューに至ったのは、所属するレインボーエンタテインメントの平田幸秀氏が、08年に他のアーティストのキャンペーンで青森のFM局を訪れたのがきっかけ。地元のインディーズバンドの音源を流すコーナーで曲を聴き、「圧倒的な存在感に衝撃を受けてすぐ契約に動いた」(平田氏)。

 2010年2月にインディーズ盤を出すと、耳の早い音楽ファンが注目し始める。収録曲の『つじつま合わせに生まれた僕等』のようにヒリヒリするような歌詞と、緩急のギャップが激しいエモーショナルな歌声が、ツイッターなどで話題となっていった。

 そして同年6月、6曲入りアルバム『爆弾の作り方』でメジャーデビュー。この際、ボーカルの秋田が人と接するのがあまり得意なほうではないこと、そして持ち味である詞の強さにより注目してもらう方法として、表に出ないことを選んだ。ジャケットは詞の世界観を表したイラスト、プロモーションは「Myspace」などインターネットを中心に展開。さらに、CDには歌詞カードとともに詩集を封入した。所属レコード会社、ソニー・ミュージックアソシエイテッドの小林卓也氏は、「歌では表現しきれないものを詩集で伝え、CDを買ってきたら冊子をじっくり眺めながら聴いてもらいたいと考えた」と語る。