本当に“文字”になった絵文字

 実は当時のドコモの絵文字には意匠権がなく、ドコモも栗田氏自身も絵文字の権利保護をしていなかった。「申請はしたものの、12×12ドット内なら他人でも同じ表現ができる、独自性が認められない、という話になり認められなかった」(栗田氏)。そのため、ドコモの絵文字は誰でも自由に使うことができ、改変しても構わない状態に。実際、テレビCMや駅貼りポスターの広告などでドコモの絵文字は盛んに使われてきた。栗田氏自身、「装飾を書き加えてポスターで使われている『笑顔』の絵文字を見たときは、ちょっと感慨深いものがあった」という。「本当に“文字”になったんだな、と」。

 半ばやむを得なかったシンプルなデザインが、結果的に広く、長く愛されるデザインを生んだ。権利保護のない、今風に言うと「オープン」なコンテンツであったことも、それを後押ししたのだ。

 iモード立ち上げ当時の勢いで、栗田氏が「1カ月くらいですべて仕上げた」というドコモの絵文字は、iモードの始まった99年から現在に至るまで、変わらず使われ続けている。今回、auの絵文字リニューアルにあたり、再び監修を任された栗田氏。ドコモに同じ意味の絵文字がある場合はドコモに合わせるという基本方針のもと、「単にドコモのものを持ってくるのではなく、すべてデザインを見直したうえでauに移植した」(栗田氏)という。

ドコモの禁煙マークの絵文字

 例えば「禁煙」の絵文字。「ドコモで最初に作った『禁煙』の絵文字は、右上から左下に向けて斜線が入っている。当時は時間もなく気付かなかったのだが、実は世の中の禁煙マークはほとんどが左上から右下に向かって斜め線が入っている」(栗田氏)。栗田氏はこうした点をすべて見直し、auの新しい絵文字セットとして作り替えた。禁煙マークは作り直され、「新幹線」や「テレビ」の絵文字もよりモダンなものになった。ぜひ、auの夏モデルで実際に確かめてほしい。

ドコモの「新幹線」「テレビ」の絵文字。確かに時代を感じる