iモードの絵文字に隠された大いなる「予言」

 これだけ重要な使命を帯びたコンテンツを、なぜ栗田氏が1人で担当することになったのか。端末メーカーの側で企画してもよかったのでは、とも思えるが、iモードは準備段階で端末側の開発が遅れに遅れ、どのメーカーも余裕がない状態だった。「メーカーに絵文字の相談をしたところ、『作ってもいいがドットを指定してくれ』と言われてしまった」(栗田氏)。そちらで作ってくれ、と言われているのと同じだ。「ならば、ということで自分で作ることにした」(栗田氏)。こうして、絵文字の開発がスタートする。

 iモードの開始時に用意された絵文字は176種類(これ以外にユーザーが使えない絵文字が30種類)。仕様上の制約もあり、この数に決まったという。「自分でデザインしたもの、デザイナーと相談しながら作ったものなどいろいろある」(栗田氏)が、これら絵文字のすべてを栗田氏が監修した。栗田氏自身がデザインしたものは例えば、最も有名な絵文字ともいえる「笑顔」。

最も有名な絵文字、笑顔。ドコモにおける正式名称は「わーい(嬉しい顔)」

 当時のiモードの仕様上、文字は12×12ドットのサイズでデザインする必要があり、「このサイズで笑顔を表現しようとすると、口角を上げることもできず、必然的にこのデザインになった。デザインセンスを働かせる余地はあまりなかった」(栗田氏)。しかも、デザインに関わる方なら察しがつくだろうが、12×12ドットということは「ちょうど中央に来るドット列がなく、当初の絵文字を見ると上下左右いずれかに寄っているものも多い」(栗田氏)。

iモード端末に当初から入っていた絵文字の1つ、「映写機」。実はこの絵文字、ユーザーによっては魚のフグの絵文字として使っている場合があるという。絵文字は限られた色数、ドット数での表現の限界に挑戦する試みでもあった

 コミュニケーションをより豊かに、コンテンツをより楽しく、という当初の目標に従うと、笑顔や泣き顔、ハートマークなどに加えて、間違いなく増えるであろう占いコンテンツ用の星座マーク、天気予報に使える晴れ・雨マークなども必須になる。こうして「176種類の絵文字は一気に決まっていった」(栗田氏)という。

ポケベル時代の経験があってか、ハートマークはiモード開始当初から4種類も用意

 だが、中には栗田氏が先見の明を働かせて入れた絵文字もある。例えば「旗」の絵文字。

旗の絵文字

 これは位置情報系のコンテンツを想定し、Googleマップのピンのようなイメージで使われると予想して栗田氏が入れたものだ。「どこへでも持って行けるケータイならではのコンテンツとして、位置情報系のサービスは必ず来ると思った」(栗田氏)。まだiモードが始まる前の話だ。今、次の10年を見越して絵文字を作るなら、あなたは何を入れるだろうか。

 また、iモードでは当初から「ぴあ」がイベント情報などを提供しているが、絵文字のなかには「ぴあ」本誌で使われていたデザインのものがいくつかある。昔からある絵文字のなかでも、よく見るとテイストが違うものがそれだ。ぜひ自分のケータイで探してみてほしい。