浜崎あゆみやEXILEなどを擁するエイベックス・グループがアジア展開を強化している。昨年12月、ミュージカル興行や劇場運営などを行う米BASE ENTERTAINMENTと提携して、東アジア市場を共同で開拓すると発表。上海には4月、ライブの制作・運営やアーティストマネジメントなどを主な事業とする新会社エイベックス上海を設立する。

 狙いは、ライブやグッズ販売などを中心とした新たな音楽ビジネスの拡大にある。エイベックスグループは1998年、台湾にエイベックス台湾を設立、2006年には北京にエイベックス・チャイナを設立するなどして、アジアでの事業を拡大してきた。ただ世界的に、CDパッケージなどの売り上げは縮小傾向にあることから、新会社などの設立でアジア戦略も大きく方向転換する。

 米BASE ENTERTAINMENTは、米国のほか、マカオやシンガポールにもエンターテインメント施設を持つ。エイベックスグループでライブ事業を担うエイベックス・ライヴ・クリエティヴが同社と業務・資本提携して東アジアでのコンサートを共同展開するなどする。エイベックス上海は、海外展開を統括するエイベックス・インターナショナル・ホールディングスの子会社として設立。イベントやライブの企画・運営、アーティストのマネジメントなどを手掛ける予定だ。

 エイベックスは2月17日、香港のMEDIA ASIAとも提携してアジア展開を加速する。その狙いをエイベックス・インターナショナルホールディングス・リミテッドの北谷賢司社長に聞いた。

――上海に新会社を設立する狙いは?

北谷賢司氏(以下、北谷):「米国のメジャーレコード会社を見ていても、音楽産業の流れははっきりしている。パッケージやデジタル配信の売り上げは縮小傾向にある。既存のビジネスに依存していると音楽事業会社が衰退するのは間違いない。これを是正して社業を成長させるには大きく3つくらいしかやることがない」

 「1つ目は、ライブエンターテインメント事業を自ら育てること。2つ目はマーチャンダイジングを成長させて、売り上げや収益を伸ばすこと。3つ目がキャスティングビジネスの拡大だ。自社でマネジメントするタレントをコマーシャルなどに出演させて何らかの利益を得るビジネスだ。新会社を通じてアジア地域でのこれらの事業を拡大する」

 「これまでは中国国内などでアーティストを開発してCDの販売やデジタル配信などで収益を拡大しようとしてきたが、今のビジネス環境にはマッチしていない。われわれも米国のメジャーレーベルが目指している総合的な音楽エンターテインメント企業を目指さないといけない。日本の文化に対するポジティブなイメージを抱いている人も多く、経済の中心と言われる上海にアジアの拠点を移して、次のステップに移るほうがいいだろうと判断した。エイベックス台湾で育成しているアーティストの興行活動のベースとしても北京より上海の方が立地条件が良い」

エイベックス台湾の所属アーティスト。左からPopアーティストのA-Lin、ロックアーティストのSHIN、俳優のEddie
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――エイベックスのアーティストが上海でライブを開くということか。

北谷:「エイベックスのアーティストが現地でライブをすることが中心ではない。エイベックスは台湾、香港にも拠点がある。BASE ENTERTAINMENTとの提携で、マカオ、シンガポールにも進出できるようになった。今後はアジアの興行サーキットを構築していきたい。例えば、アニメソングのイベントなら、年に2~3回できるかもしれない。欧米の著名アーティストのアジアツアーを展開するなど、アジアのマスタープロモーターになることも考えられる。エイベックスはこれまでにも日本・台湾・香港で韓流アーティストのツアーやパッケージ販売を手掛けてきた。欧米、日本、韓国の女性アーティストを集めてアジアを回る新しいビジネスなども考えられる。企画段階にすぎないが、今、開発しているところだ」

エイベックス・インターナショナル・ホールディングス・リミテッドの北谷賢司社長。これまでローリング・ストーンズ、マドンナ、U2などの大物アーティストを招へいしてきたメディア・エンタテインメント産業のエキスパート。ソニー、東京ドーム、ぴあ、ローソンなどの役員や顧問を歴任。2011年3月から現職

――ライブは移動コストも安くないのではないか。

北谷:「キャパやチケット代がいくらとれるかにもよるが、規模感が出てくれば、スポンサーも確保できる。例えば、オフィシャルエアラインやオフィシャルホテルがついてくれれば、少しずつ経費も削れる。アジア全体で積極的なスポンサーシップ開拓もしなければならない。エイベックスブランドでアジアのコンサートを展開するときは、『エイベックスだからこのスポンサーがついている』となるのが理想的だ。国内のライブイベントは別だが、連動できるチャンスがあるものは徐々にやっていく」