1990年代に興隆を極めたビジュアル系。「最近は影が薄い」と感じている人もいるかもしれないが、実はそうではない。2004年頃から「ネオ・ビジュアル系」と呼ばれる次世代バンドが再びブームを巻き起こし、海外でも高評価を受けているのだ。さらに、「オサレ系」などのジャンル分けや、音楽に合わせて踊るフリ、土下座やサイクロンと呼ばれる過激なヘッドバンキングなど、ファンの間で独特の文化が共有されていることを知らない人も多いのではないか。

 一般からは見えにくくなったビジュアル系の音楽シーンだが、CDの売り上げが落ち込む音楽業界の中でも一定のマーケットを維持し続けている。ファンの年齢層としては10代から20代前半の女性が多数とされているが、90年代からファンを続けているベテランも多い。「バンギャ(バンギャル)」という言葉に対して、自身を「オバンギャ」「ババンギャ」と自嘲気味に呼ぶ人もいる。今もなお、ファンの心をつかみ続けて離さないビジュアル系の魅力や現状を探った。

ポイントはライブでの一体感。フリを動画サイトで予習してライブへ

 大手メディアを巻き込んだブームが去った後でも、コアなファンの囲い込み、脈々と受け継がれていったビジュアル系の文化。いったい、どんな魅力があるのだろうか。

 都内に住む20代半ばの女性ファンは「ビジュアル系のライブはグルーブ感が違う。曲に合わせてフリを踊ることで、会場の一体感が味わえるんです。例えば、the GazettEのライブでは、お客さん同士が手をつないでジャンプしたり、『関東土下座組合』という曲に合わせて、ファンが土下座をしながらヘッドバンキングしたりします」とライブの楽しさをその一つに挙げる。

人気ビジュアル系バンドのthe GazettE
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 フリで一体感を味わう楽しみ方は広く定着しているらしく、最近ではニコニコ動画にアップされたフリを予習してからライブに参戦するファンも多いとか。楽曲やビジュアルを楽しむことはもちろんだが、土下座、サイクロン、八の字などのヘッドバンキングやフリでストレス解消するという一面もあるようだ。

 曲調や見た目によって、ビジュアル系をジャンル分けをして楽しむ文化もファンの間で浸透しているという。

 「ソフビ(ソフトビジュアル)」「オサレ系」「コテ系」「コテオサ系」「耽美系」などがその一例だが、「名古屋系」や池袋にあるライブハウスの名前から取った「サイバー系」など、場所に由来した呼び方をするファンもいる。現在では、「the GazettE」「Alice Nine」「NIGHTMARE」「シド」を「ネオ・ビジュアル系四天王」と呼ぶこともあるようだ。

 90年代以降もビジュアル系は進化を続けている。「メガマソ」の涼平など女性のような見た目の「女形」が所属するバンドもあり、「女性より可愛い」と男女双方のファンから人気が高い。ファンによって楽しみ方が多様化しており、それごとにコミュニティーが形成されているのだ。

右の涼平さんのように女性のような見た目のアーティストは「女形」とも呼ばれる
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