毛越寺浄土庭園(平泉観光協会/平泉町観光商工課)(画像クリックで拡大)

 2011年6月24日と26日(現地時間24日と25日)、パリで開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第35回世界遺産委員会で、小笠原諸島が世界自然遺産、岩手県平泉が世界文化遺産への登録が決まった。これは、島根県の石見銀山の文化遺産登録から4年ぶりのこと。東日本大震災で沈みがちだった日本に明るいニュースとなり、観光産業も活気を取り戻しつつある。

 このニュースの直後から、各旅行会社には問い合わせが相次いだと聞く。

 実際に、世界遺産に選ばれるとどれくらいの影響があるものなのか。そもそも日本における世界遺産とはいくつあるものなのだろうか?

 ここでは、世界遺産の定義から、日本の最新の登録地、平泉、小笠原諸島について解説していく。さらに意外と知らない日本の世界遺産の数々と、その中の3つ、屋久島、熊野古道(紀伊山地の霊場と参詣道)、知床については、経済効果と自然保護の観点から、現在の取組みをお伝えしたい。

まずは、「世界遺産」の定義から

 世界遺産の定義は、「顕著な普遍的価値をもつ人類のかけがえのない遺産」。「国際協力を通じた保護のもと、国境を越え今日に生きる世界のすべての人びとが共有し、次の世代に受け継いでいくべきもの」を指す。1972年にUNESCO(ユネスコ/国際連合教育科学文化機関)にあるユネスコ世界遺産センターで採択された世界遺産条約に基づき、締結している186カ国(2011年現在)の中から選出される。

 世界遺産には、文化遺産、自然遺産、その2つの価値を持つ複合遺産があり、有形の不動産が対象となっている。

 2011年7月末日までに登録された世界遺産は合計936件になった。

 さらに、2001年からは有形の不動産以外、民族音楽や口承の伝統などの無形に対して認定する「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」が出され、2006年には「無形文化遺産の保護に関する条約(無形文化遺産条約)」を採択。日本では、能楽や歌舞伎、アイヌ古式舞踊、雅楽など合計18件が登録されている。

どうやって選出され、決定されるのか

 世界遺産登録の手順はこうだ。まず国が世界遺産条約を締結。世界遺産登録を目指す物件を「暫定リスト」としてまとめてユネスコ世界遺産センターへ提出。その中から1年につき原則1件をユネスコ世界遺産センターに推薦する。その後、文化遺産対象は国際記念物遺跡会議(ICOMOS)へ。自然遺産対象は国際自然保護連合(IUCN)で現地調査を中心に審査され、年に1度開催される世界遺産委員会で認定される。

 推薦を受けたものすべてが認定されるわけではなく、延期や登録条件が追加されることもある。また、登録後に自然災害や紛争、開発などにより、「顕著で普遍的な価値」が損なわれる危険性がある場合、「危機にさらされている世界遺産」、通称、危機遺産に認定される。その例のひとつが、ドイツ、ドレスデンのエルベ渓谷だ。住民の利便性を考えて橋が建設されたため、景観が損なわれたと判断され、2009年に登録を抹消された。

 世界遺産に登録されると、世界に知られることになり観光需要は増える。これに伴いリスクがあることも否めない。だからこそ、国や国際社会に対して保護する義務と責任は大きくなる。

 日本では、登録後に政府機関として保護管理センターが設置されたり、観光地としての整備が進むが、白川郷のように現在も生活の場である集落全体が登録されたことにより、個人で勝手に改築や修理を行うことができなくなるケースも出ている。

 では、今回日本から登録された2つの世界遺産はどうか。