登録されることで成熟した観光地へと変貌

 世界遺産は、ヨーロッパやアジアでは誰もが知る存在だが、開拓精神旺盛なアメリカでは興味を持つ人は少なく、「世界遺産」という言葉もあまり浸透していないという。もしかしたら世界遺産は、世界を知る上でキーポイントとなるブランドのようなものなのかもしれない。しかし、登録されることで地域の歴史や自然、文化が守られることはもちろん、観光産業の発展につながることも事実だ。特に日本では観光需要が飛躍的に伸びることもあり、成熟した観光地へと変貌する場所も少なくない。今後も日本、あるいは世界における世界遺産登録地に注目していきたい。

知られざる世界遺産

 最後に、世界遺産所条約に基づく文化遺産、自然遺産、複合遺産と、無形遺産条約に基づく無形遺産が、世界遺産活動の主なものとして知られているが、他にも世界遺産に相当する価値が認められたものがある。今後の注目観光トレンドとして紹介しておこう。

世界ジオパーク

 世界遺産の地質版といわれるもので、科学的に重要で貴重、美しい地質遺産を含む自然公園を認定する。2004年にユネスコの支援を受けてスタート。現在は19カ国63地域が認定されている。日本では、北海道の洞爺湖有珠山、新潟県・糸魚川、長崎県・島原半島、京都府と兵庫県、鳥取県にまたがる山陰海岸国立公園などが、世界ジオパークネットワークに認定されている。

世界記憶遺産

 正式には「世界の記憶 Memory of the World」。世界にとって重要と考えられる、直筆の文書や書籍、音楽、写真、映画を認定するもの。1992年にスタートし、オランダの「アンネの日記」、フランスの「人権宣言」など76カ国193件が登録されている。今年5月には、福岡県出身の炭鉱記録画家、山本作兵衛が描いた筑豊炭田の日記や絵画697点が、日本で初めて登録された。

世界農業遺産

 国連食料農業機関(FAO)が2002年からスタートしたプロジェクト。次世代へ継承すべき重要な農法や生物多様性を有する地域を認定するもの。今年、新潟県佐渡市と石川県能登半島が登録された。佐渡市は、国の天然記念物トキとの共生をめざす減農薬農法の取組みが評価され、能登半島は、棚田の米栽培や海女漁を営む漁村を「里山里海」として保護していることが評価された。世界農業遺産は正式には「世界重要農業資産システム(GIAHS)」といい、現在までにペルー、フィリピン、中国など8地域が認定されている。

(文/広瀬敬代)