徹底したルール作りで生態系を守る小笠原諸島

父島(C)環境省(画像クリックで拡大)

ミナミハンドウイルカ(エコツーリズム)(C)小笠原村(画像クリックで拡大)

 一方、世界自然遺産に登録された小笠原諸島。

 東京都心から約1000km。定期船で約25時間30分かかるが“東京都”だ。有史以来、一度も大陸とつながったことがなく、数千年前に火山が隆起してできた小笠原諸島は、父島、母島をはじめ、大小30ほどの島からなる。

 今回、世界自然遺産に登録されたエリアは、聟島(むこじま)列島、父島列島、母島列島、火山(硫黄)列島のうち北硫黄島、南硫黄島、西之島。父島、母島では、集落を除いた区域と一部周辺の海域が世界遺産の区域が登録された。

 登録エリアでは南米エクアドルのガラパゴス諸島やハワイ諸島と同様に固有種が数多く存在し、独特な生物の進化が見られる。特徴的なものが、父島や兄島に広がる乾性低木林。乾燥した気候に合わせて、葉の形を変えるなどだ。カタツムリなどの陸産貝類では、海辺や森など生息する環境によって色や大きさが変化し、諸島に生息する106種類のうち、100種類は固有種だという。また、国際自然保護連合(IUCN)が認定している希少種リストのうち、57種の絶滅危惧種が生息している島でもあり、まさに東洋のガラパゴスだ。

 しかし、島独自の生態系がそのまま保たれているのではなく外来種も多いのが小笠原諸島の長年の課題。現在確認されているものだけで22種。なかでも北米原産のイグアナの一種、グリーンアノールは数が多く、蝶の一種、オガサワラシジミなどの希少昆虫類が生息する母島では、グリーンアノールの侵入を防ぐフェンスを設置した自然再生区を設け、粘着性のトラップを設置するなどの対策を行っている。

 外来種は、小笠原への唯一の交通機関である船によっても侵入する危険があり、諸島内の個々の島々にも特徴的な生態系があることから、東京からはもちろん、各島の渡航ルートの船に乗・下船する際には、靴底や荷物についた虫や植物の種子、土壌を落とすために、靴底の洗浄マットやローラーを設置し、丹念に落としてから島内に入るように徹底している。

 渡航できるのは、住民のいる父島、母島、入場数制限をしている南島のみ。すべての島でキャンプは禁止。南島と母島石門一帯ではガイドが同行しないと入れないなどのルールを設けている。

 こうした地道な努力が結実し、世界自然遺産として登録されることになった。

 小笠原諸島へのアクセスは、6日に1度の定期船のみだが、観光客は年々増加傾向。聟島諸島から母島諸島沿岸には、ミナミハンドウイルカが定住し、ドルフィンスイムも可能。ザトウクジラやマッコウクジラも回遊し、1年を通してホエールウォッチングもできるなど海の環境も大きな魅力でもともと人気が高い。さらに世界自然遺産登録を受けて、大型客船が寄港することも決まった。定期船が出発する時、多くの島民が船で併走しながら見送りしてくれるのも、いまや小笠原諸島の名物だ。

 自然保護の徹底と観光需要の拡大を両立させている成熟した観光地として、今後の発展が見込まれる。

トラップで捕獲されたグリーンアノール(生態系を守る取組/外来種対策)(C)尾園暁(画像クリックで拡大)

ははじま丸下船時の靴底洗浄(生態系を守る取組/外来種対策)(C)東京都(画像クリックで拡大)