※この記事は日経エンタテインメント!(6月号)の記事を転載したものです。購入はこちら

 東日本大震災が原因で、図らずも批判の的となってしまった「ACジャパン」。3月11日の震災直後は民放各局がCMなしの報道特番を放送していたが、13日の夜ごろからCM枠が徐々に復活。しかし放送を自粛するスポンサーが続出したため、その穴埋めとしてACのCMが集中的に流れたのが原因だった。

 「何度もしつこいという声のほか、税金の無駄など誤解に基づくクレームも多かった」とACジャパンの高島邁常務理事は話す。CMの最後に流れる「AC♪~」というサウンドロゴは「地震速報と間違える」との苦情があり、全国160以上の放送局に音の消去を依頼する異例の措置にも発展した。

 ACジャパンとは、一般企業やメディア、広告会社など約1150社の会員企業からの会費で運営される社団法人。広告で社会に様々な提言をしようという理念のもと、環境や親子の問題を扱ったキャンペーンほか、福祉活動をする団体の支援を目的にCMを制作している(下参照)。CMは各放送局に託され、急な出稿中止の際など、局の判断で無償オンエアされる仕組みだ。

ACジャパンの取り組み

全国キャンペーン
「挨拶励行」をテーマにした写真のアニメCMのほか、「思いやりの気持ち」と「子どもとのコミュニケーション」を訴える3本を全国で展開(画像クリックで拡大)

地域キャンペーン
全国を8つの地域に分けて各地域で制作。放送をきっかけに金子みすゞの詩集が品切れとなった「こだまでしょうか」は東京の地域CM(画像クリックで拡大)

支援キャンペーン
10年度は公共福祉活動に取り組む9つの団体を支援。だが、文字・活字文化推進機構の「知層」は地震を想起させるなど、放送自粛が相次ぐ(画像クリックで拡大)

※この他、NHKとの共同キャンペーンも展開。だが、生物多様性をテーマにした10年度CMは「命が消える」などの表現があり、これも休止中。

 ACは7月から翌年6月が1つの年度で、今回流れたのは10年度のキャンペーン用(2010年7月~11年6月)に作った13本。本来は震災を想定したCMではないため、混乱が広がってしまった。

 まず、14日に「日本アイバンク協会」支援CMに出演していた少年が、被災地の大船渡在住と判明。震災直後は消息不明だったため、急きょ各局に放送自粛を要請した(後に無事を確認)。また、「国境なき医師団」は「生死の境目」、「あしなが育英会」は「親を亡くした子供たちに」といった表現があり、時勢に合わないとの声があった。

 同様の理由で、15日には13本中6本がストップとなり本数が半減。その結果、オンエア可能なCMに露出が集中し、「日本対がん協会」の仁科亜季子・仁美親子など、出演者にまで批判の矛先が向く事態に発展してしまった。「普段なら良いと思うメッセージでも、あまりに何度も見せられて、押し付けに感じられてしまったようだ」とACジャパン・クリエイティブディレクターの尾形敏朗氏は語る。