知る人ぞ知る傑作がそろう

 ランキングを一通り眺めてみて「知っているタイトルがほとんどない…」という人も多いだろう。それもそのはず。ほかのマンガランキングと比べても、このラインアップは一味違い、「次のトレンド発掘」的要素が強い。

 その年のベストマンガを決めるランキング誌『このマンガがすごい! 2011』(宝島社)のオトコ編・オンナ編でベスト10入りした20作と比較すると、重複しているのは1位『進撃の巨人』、3位『テルマエ・ロマエ』、4位『アイアムアヒーロー』と、トップ5に入った3作のみ。売れ筋タイトルを熟知した書店員が、「まだまだ埋もれている良作を世に出したい」と考えているからだろう。今回のランキングは、現場が目をつけた次のブレイク作がそろっているといっていい。

 大きな傾向は、現在のマンガで最も売れているジャンルである「週刊少年マンガ誌」連載が1作もなく、非メジャー雑誌連載作が多いこと。実際、最近のマンガ界では、メジャー誌の別冊やマニア誌など、個性的な作品を多く掲載した月刊誌が増えており、知られざる佳作は多い。5位『青の祓魔師(エクソシスト)』は07年に新創刊された『ジャンプスクエア』連載作で、10位『flat(フラット)』は07年に創刊された女性向け月刊誌『月刊コミックブレイドアヴァルス』発だ。7位『ばらかもん』にいたっては、ウェブ雑誌『ガンガンONLINE』(スクウェア・エニックス)掲載作である。ランキングを読み解いてくれたマンガ研究家の藤本由香里氏は、「たくさんのマンガを見慣れている書店員さんが、より『知ってほしい』作品を選んだ結果でしょう」と話す。

 今やメジャータイトルとなった『進撃の巨人』も、そもそもは09年に創刊された新興雑誌『別冊少年マガジン』から飛び出した作品。『別冊少年マガジン』を創刊した編集者が『進撃の巨人』は、「『週刊少年マガジン』のカラーには合わなかった。別冊だったから連載できた」と明かしていたが、既存の枠を超えた雑誌連載だからこそ自由な発想の物語が生まれている。今回のトップ10も、個性的でユニークな作品が上位に挙がる。『進撃の巨人』に続く、2位『3月のライオン』は、メジャーとは言い難い“将棋”が題材。『テルマエ・ロマエ』は、古代ローマと現代日本を行き来するという、既存作の穴を突いた奇想天外なギャグマンガだ。作者や掲載誌になじみはないかもしれないが、手にとってみれば、新鮮な驚きや発見がきっと見つかるはずだ。