東京のミニシアターに学ぶことは、何ひとつない

 序破急が運営する映画館が注目されるのは、今に始まったことではない。ノンフィクション作家の佐野眞一氏が1996年に上梓した『日本映画は、いま』(TBSブリタニカ)では、シネマライズや池袋の旧文芸坐とともに冒頭に登場する。2009年には『週刊文春』の「おすすめのシネコン」ランキングで、シネコンでもないのに4位にランクインされた。また、現在も東京の映画館経営者が視察に訪れることも多いという。

 では、「東京のミニシアターに学ぶことは、何ひとつない」──この住岡氏の言葉は何を意味するのか?

 「東京の映画館は、最低2層ないとダメなのに、そこを1層で天井を無理に上げてやっているところも多いです。それでは傾斜なんてつけられないし、音響も良くない。そんなことで、ミニシアターなどと気取らないでほしい。そもそも映画館の体をなしていないんだから」。

 劇場コンセプトや設備だけでなく、序破急では社員教育にも力をいれている。社員のために年間340日を超える試写も実施している。新作だけでなく旧作も観て、鑑賞後に意見交換もする。いわば映画の勉強会だ。そこには明確なポリシーがある。

 「ミニシアターのもっとも根源的な問題は、映画の面白さやすごさを現場の人間が分からなくなっていることです。悪口ではなく事実として、映画館の人は本当に勉強しない。イタリア料理店をやっていれば、他の店に食べに行くのに、そういうことをしない。私たちは、プリントチェック、ピントやボリュームの調整も社員全員でやるほどです。社員試写もそのためです」(住岡氏)。

 こうした序破急の姿勢は、東京のミニシアターの価値を考え直させる。設備はシネコンに劣り、それもあって観客だけでなく映画も取られてしまっている。それでも続けられていたのは、東京だからこそ可能なお殿様商売だったと言えるかもしれない。

 ミニシアター再生のヒントは、広島にある──。

(文/松谷 創一郎)