広島・序破急が貫く独自路線

 「東京のミニシアターに学ぶことは、何ひとつない」――広島市内でミニシアターを経営する序破急社・総支配人の住岡正明氏は、そう言い切る。

 序破急は、広島市内で4サイト6スクリーンの劇場を経営している。もっとも新しいのは、昨年11月26日にオープンした八丁座だ。場所は、広島の中心街・八丁堀に位置する福屋デパートのなか。もともと松竹系の映画館と名画座があったところに、居抜きで入ったものだ。他にも、サロンシネマとシネツインを各2スクリーンずつ別の場所で運営している。

 八丁座をはじめとして序破急が運営する映画館に共通するのは、シネコンに引けを取らない設備の充実だ。シートはまるでソファーのようにゆったりしており、隣の席のひとがいっさい気にならない広さだ。前後の間隔も、足を完全に伸ばしても届かないほど広い。また、席には小さな机が備え付けられており、飲み物や荷物はそこに置けるようになっている。これほどの大きなシートを採用したために、座席数はそれ以前の劇場からは半減したほどだ。

 八丁座は、コンセプトもとてもユニークだ。その雰囲気は、両国国技館のマス席や江戸時代の芝居小屋をイメージしており、廊下の壁には『十三人の刺客』でも使われた東映撮影所のふすま絵を設置するなど、内装は和風に統一されている。これは広島出身の映画美術監督・部谷京子さんによるものだ。ゆったりとした座席も地元の家具メーカーのオーダーメードだ。

 住岡氏は、同社の経営方針についてこう説明する。

 「『見たことがない映画館』かつ『くつろげる映画館』──八丁座は、そういう思いで作りました。2億円かかりましたが、すべて借金です」(同・住岡氏)。

 広島の中心街の映画館は、90年代後半から郊外に登場してきた4つのシネコンによって、ほとんどが閉館に追いやられている。それは、広島だけでなく2000年代に全国各地で生じた流れだ。だが、序破急社だけは経営を維持し、2005年にシネツイン新天地をオープンし、さらに昨年八丁座を開いた。完全に流れに逆行している。

 「僕らは同じペースでやっていて、よその映画館がいつの間にかやめているという印象です。89年にシネツイン本通りを開いたときも、思い切ったことをしました。日本ではじめてドルビーSRを導入し、床暖房とフランス製のゆったりとしたシートを用意しました。当時で1億5000万くらいかかりました。どこにも負けない映画館を作ろうという思いで、やっていることはその頃から一緒です。他の映画館が、シネコンにお客さんを取られて潰れたのは必然です。シネコンの設備のほうが良いですから。我々は、シネコンに負けない設備をしているだけです」(同・住岡氏)。

シネコンに負けず劣らずの設備で映画ファンを引きつける(画像クリックで拡大)