都心の映画館状況

 2000年代、日本映画産業は復活を遂げた。シネコンの増加によって観客が入るようになり、日本映画では製作スキームの効率化が進んだ。ミニシアターにとっては、シネコンの増加や外国映画の買付金額の高騰は逆風ではあったが、DVDマーケットの拡大や日本映画人気によって、日本映画がミニシアターで上映される割合も増した。

 渋谷・恵比寿地区に目を移すと、2000年代に入り、映画産業の好調と同期するように劇場(スクリーン数)も激増している。99年には25スクリーンだったが、ピークの2006~2007年には39スクリーンにも増加した。シネセゾン渋谷が開館する80年代中期までは、わずか12スクリーンしかなかった渋谷・恵比寿地区は、約20年間で3倍以上になったのだ。去年から今年にかけて急激に劇場は減ってはいるが、それでも現在は10年ほど前の水準である26スクリーンに戻っているだけだとも言える。

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 こうした状況を冷静に考えると、単に渋谷地区の映画館が増えすぎたようにも見える。シネセゾン渋谷を運営している東京テアトルも、この状況についてはとても自覚的だ。今回の閉館も、まったく後ろ向きではないと話す。

 「たしかに渋谷地区は、映画館が増えすぎたんだと思います。それによって公開本数も増え、一本一本が埋もれていった状況もありました。さらにそこへ追い打ちをかけるように、新宿にシネコンが二つできました。そうしたことを踏まえると、今の渋谷地区は適正な数に戻りつつあるのではないでしょうか。もちろん、シネセゾン渋谷で映画を観て青春時代を送った方はたくさんいるので、我々も含め、思い出の地がなくなるのは非常に淋しいことだとは思います。ただ、シネセゾン渋谷で上映していた作品は、今後は09年から運営しているヒューマントラストシネマ渋谷で上映します。弊社としては、シネセゾン渋谷しかない時代よりもスクリーン数は増えているので、今回の閉館はまったく後ろ向きの対策ではないんですよ」(同社・赤須氏)。

 新宿には、2007年2月に新宿バルト9、翌2008年7月に新宿ピカデリーがオープンした。この二つのシネコンによって、歌舞伎町の多くの劇場が閉館するなど、地域での再編が進んでいった。渋谷・恵比寿地区もその影響を受けた。一説には、渋谷地区から新宿地区に10%ほど観客が動いたとも言われる。また、新宿バルト9と新宿ピカデリーは、以前ならミニシアターで上映されるタイプの映画も積極的に公開している。現在なら韓国映画の『ハーモニー 心をつなぐ歌』やフランス映画の『しあわせの雨傘』がそうだ。ミニシアターの牙城をシネコンが崩しつつあるのだ。