いま、日本のみならず中国でも放送され好評を博しているドラマ

平山 武之(ひらやま・たけゆき)
1943年、福岡県生まれ。68年にNHK入局。73年にドラマ部ディレクターとなると、連続テレビ小説『マー姉ちゃん』(79)を始め、数々の演出を手がける。1987年に日本初の日中共同制作ドラマ『その人の名を知らず』を演出。以降、日中共同制作の草分けとして多数のドラマに関わる。01年にNHKを退職後、NHKエンタープライズ取締役、東北新社 執行役員を経て、07年よりギャンビット エグゼクティブプロデューサーを務める

 2010年1月~7月までNHK BShi(BSハイビジョン)で放送され、同年9月~今年3月までNHK総合で放送中の『蒼穹の昴』は、清朝末期を舞台にした浅田次郎原作の同名歴史小説をドラマ化した作品だ。前編(関連記事)では、このドラマが日中共同で制作された作品の中でも、これまでの“日中共同制作”とは異なるビジネススキーム構築に成功した話までを聞いた。

 後編となる今回は、NHKに予約購入してもらい、中国の制作プロダクションと共同で『蒼穹の昴』制作に乗り出した平山武之氏が、中国での放送を前提にドラマを作るために超えなければならなかった、さらなる壁について、そしてその壁を超える方法、さらには次なる目標について聞く。

中国の制作プロダクションに任せるという大きな決断を下した

 平山氏はNHKとCCTV(中国中央電視台)といった放送局同士のビジネスでなく、民間の制作プロダクション同士のビジネス、つまり日本側はACC(アジア・コンテンツ・センター)、中国側は華録(北京華録百納影視有限公司)が、それぞれ対等な関係で手を組み、NHKには初めて「予約購入」というシステムを導入してもらった。そしていざ、制作が始まると、「最初はNHK時代と同様に、演出もこちらで半分くらいは担当するのかなと思っていたし、各部署のチーフも連れて行こうと漠然と思っていた。ただ、そうなると日本人スタッフの“あご足枕(食費、交通費、宿泊費)”といった費用が必要となり、予算的に厳しい」。そう考えた平山氏が決断を下したのが、演出から仕上げ作業までのプロダクション業務すべてを、中国の制作プロダクションに任せることだった。

 とはいえ、任せっきりでは作品のクオリティに不安が残る。その不安を少しでも取り除くために注力したのが脚本作りだ。そこで平山氏は、まずは日本の優秀な脚本家にお願いをし、脚本作りに取り組む。実際に書いてもらったのは、20話以上に及ぶ脚本だ。「まずは、たたき台が必要だったし、NHKに対しても、どんなドラマを作るつもりなのかを脚本という形で指し示す必要があった」という。