2010年9月10日、SNS大手のミクシィは新プラットフォームに関する大規模な発表を行った(関連記事)。これは今までのSNSの事業領域を大きく広げる野心的な施策だが、同時に海外から本格上陸する世界最大のSNS「Facebook」との本格的な争いの幕開けも意味する。

 今回は日頃からソーシャルメディア全般をウォッチし続け、人気ブログ「In the looop」で深く考察しているループス・コミュニケーションズの斉藤 徹氏に、ミクシィの戦略などから透けて見えるネット業界の構造変化について聞いた。

斉藤 徹

(さいとう・とおる)
ループス・コミュニケーションズ代表取締役
 1985年、慶応義塾大学理工学部卒、日本IBM入社。ソフト技術者およびSEとして汎用機からオフコン、PCまで広く開発に従事。1991年にフレックスファーム創業。携帯コンテンツ変換ソフト「x-Servlet」で日経新聞優秀製品賞・広告賞を受賞。04年にフレックスファームの全株式を KSKに売却。05年にループス・コミュニケーションズ創業。国内での企業向けSNS構築分野でトップシェアを誇る(ミック経済研究所,アイティーアール社 2008年調査にて)。

Facebookは「日本でも勝てて当たり前」と思っている

――今回発表された、mixiの新プラットフォームの狙いは何だと思うか。

斉藤 徹氏(以下、斉藤): SNSが従来から保有する友人関係のデータ(ソーシャルグラフ)だけでなく、それぞれの人々がどんなコンテンツやモノを好むかという情報を蓄積することだ。

 例えば新プラットフォームの機能の一つである「mixiチェック」は、SNSの外で注目した記事や商品の情報を、簡単な操作でマイミクと共有できる仕組み。この機能をmixiユーザーが使うことで、ユーザーの嗜好についての情報が蓄積される。こうしたデータを独占的に保有すれば、検索、広告、コマース、すべての分野に多大な影響力を及ぼせる。

 例えばウェブ検索の結果を「自分の友人たちが重視している情報」という基準でフィルタリングできるため、Googleに対する差異化が可能だ。同じく広告や通販の分野でも、「友人たちが興味を持っている商品」についての情報を優先的に通知できる。「あなたの友人が薦めているから」というリコメンドができれば、今までの広告とは全く違ったビジネスチャンスにつながる。そのプラットフォームを保有するSNSにとっては大きな収入源だ。これは、Googleによって支配されていたネット世界のパラダイムシフトになり得る。

――最近のミクシィは、かなり矢継ぎ早にさまざまな施策を発表している。

 世界最大のSNS、Facebookの日本進出を強く意識しているのではないか。現時点でのアクティブユーザー数はmixiの約1500万に対し、Facebookは140万人程度。ただしFacebookは今年に入り日本法人を開設し、日本向けのモバイルサイトをスタートさせるなど、急速に攻勢を強めている。

 Facebookは最近、「日本国内ユーザー同士の友人関係の数」が、「海外ユーザーと国内ユーザーの友人関係の数」を上回ったようだ。この状態を同社は「ティッピングポイントを超えた」と呼ぶが、今までFacebookは、一度ティッピングポイントを超えた国で勝てなかったことがない。110カ国以上で現地のSNSを逆転してきた同社は、「日本でもシェア1位を取れるのは当たり前」と考えているだろう。