去る7月17日、渋谷の小さなカフェで、ひとつのイベントが行われた。その名は「電書フリマ」。電子書籍をフリーマーケット形式で、つまり対面で売るというイベントだ。主催は「電子書籍部」という都内のライター・編集者育成文章講座の生徒による“サークル活動”だったが、リアルな対面式販売とデジタルな電子書籍を組み合わせた斬新さがネットで話題になった。今回の電書フリマ、開催時間は半日ほどだったが、売り上げ冊数は実に5206冊。来場者数は主催者発表で777人、そのうち購買者数は529人だ。1人あたり10冊近くまとめ買いしていった計算になる。

 デジタルな電子書籍を、どうやって対面販売するのか。その仕組みはこうだ。まず、会場で用意されている電子書籍のカタログに目を通す。カタログには書籍のタイトルとおおまかな内容が説明されているので、気になったものがあれば販売員にその場で代金を支払い、自分のメールアドレスを伝える(Gmailなどのフリーメールでも可)。すると、そのメールあてに、電子書籍をダウンロードできるURLが送信されるのだ。あとはそこからダウンロードするだけ。データ形式はPDFやEPUB(イーパブ)など複数あり、PCはもちろん、iPadやKindleでも読むことができる。

 販売されている電子書籍は小説から短歌集、対談本、写真集など全64作品。気鋭の小説家・俳人である長嶋有さんの俳句集や、人気マンガ家「うめ」さんの短編マンガなどもある。これらの作品の電子書籍化にあたっては、主催者である電子書籍部の開発したシステムが使用されている。テキストデータや画像データを著者から受け取り、それをPDFやEPUBのデータに変換、電子書籍としてパッケージングしている。

 いずれの書籍も価格は100~500円ほどで、10冊以上まとめて購入すると1冊100円になるというお得なサービスも実施された。当日、実際に筆者も会場で購入してみたが、買うときのやり取りは驚くほどあっけない。何しろ、販売員が目の前にいて代金も支払うのに、“商品”は手渡しされないのだ。帰宅してPCにデータをダウンロードして初めて、本を買ったという実感がわく。電子書籍なのだから当然といえば当然だが、この「デジタルとリアルが入り交じった感覚」は新鮮な体験だった。

 新たな電子書籍の販売形式である電書フリマ。主催者によれば、何もビジネスモデルを立ち上げるために開催したわけではないという。いったい電書フリマの狙いはなんなのか、どこを目指しているのか。電子書籍の今後も含めて、電子書籍部の代表者に話を聞いた。

代金の支払いはリアルだが、電子書籍はPCなどでダウンロードする。購入から十数分でダウンロード用のメールが送信されるので、iPadなどを使えば買ってすぐ読むことも可能(画像クリックで拡大)