この1年ほどの間に、各社から発売されるコンパクトデジカメの動画機能が大きく進化した。1920×1080ドットのフルハイビジョン画質に対応した製品や、AV家電との親和性が高く高画質なAVCHD規格に対応したものも増えた。レンズのズーム倍率も光学10倍クラスが一般的になり、遠くの被写体も大写しで写せる。VGAサイズで撮影時間も限られていた旧モデルと比べると、雲泥の差といってもよいほどだ。
コンパクトデジカメの動画機能がこれほど高画質で高性能になると、「ビデオカメラとの違いが分からない」「もうビデオカメラはいらないのでは?」と感じる人も多いだろう。そこで、ソニーの最新のコンパクトデジカメ「Cyber-shot DSC-HX5V」(以下、サイバーショット)とビデオカメラ「Handycam HDR-CX550V」(以下、ハンディカム)を用意し、画質面を中心に性能の違いを比較してみた。
【レンズ】画角やズームの速度に違いが見られる
撮像素子は、いずれも高感度撮影に強い裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R」を搭載している。もっとも、同じ裏面照射型CMOSセンサーといっても、サイバーショットは1/2.4型の有効1020万画素タイプ、ハンディカムは1/2.88型の有効600万画素相当(静止画記録時)と大きさや画素数は異なる。細かい点だが、画素の配列も違いがある。
レンズは、いずれもソニーの高画質レンズブランド「Gレンズ」を採用しており、ズーム比はどちらも10倍だ。4:3の静止画撮影時の画角を35mm判換算で比べると、サイバーショットは25~250mm相当、ハンディカムは26.3~263mm相当。16:9の動画撮影時は、サイバーショットが30~300mm相当、ハンディカムは29.8~298mm相当となる。どちらも、かなり広角に強いといえる。ちなみに、ハンディカムはアクティブ手ぶれ補正機構を有効にすると、広角側の画角が若干狭くなってしまう。広角を生かした撮影をしたい場合、三脚に据えて手ぶれ補正機構をオフにするなどの工夫が必要だ。望遠側は、ほとんど似たり寄ったりの画角だ。
▼広角側の画角を比較(静止画撮影時)
画角は、ハンディカムの方がわずかに狭いものの、静止画の広角側の画角はほぼ互角といえる。狭い室内や大きな建物の撮影では威力を発揮するだろう
▼望遠側の画角を比較(静止画撮影時)
望遠側の画角も大差はないが、描写には大きな違いが見られた。どちらも描写が若干柔らかくなっているものの、ハンディカムは桜の花がつぶれ気味になっている。周辺部の描写も甘く、紫色の縁取りが現れるパープルフリンジが見られる
ビデオカメラでは当たり前にできる動画撮影中のズーム操作も、コンパクトデジカメではズームが利かなかったり、電子ズームに限られるといった制約がある機種も多い。だが、サイバーショットは制約なくズームできる。ズーム時のガタつきやAFの抜けなどもなく、ストレスも感じない。
異なるのが、ズームのスピードだ。ハンディカムはズームのスピードを数段階で切り替えられ、かなり低速でのズームも可能だ。だが、サイバーショットは2段階しかスピードを変えられないのがやや物足りない。
▼動画撮影中のズーム操作を比較
▼Cyber-shot DSC-HX5V
▼Handycam HDR-CX550V
動画撮影中のズーム動作は、やはりハンディカムの方がスムーズだ。ズームの速度も多段階で切り替えられる。ただ、ズームレバーの操作幅が比較的狭く、微妙なコントロールは苦手な感じがした。もうちょっと遅いズーム速度も用意してほしかったとも感じる。サイバーショットのズームレバーは適度な重さがあり細かい操作に向いていそうだが、残念ながらズーム速度が2段階しかない