KindleやiPadに端を発した、デジタル・コンテンツの配信プラットフォーム競争が日本でも熱を帯びてきた。7月1日にソニー、KDDI、凸版印刷、そして朝日新聞が共同で電子書籍の配信事業会社を設立。同20日にはシャープがタブレット端末の試作機をお披露目すると共に、出版業界の賛同を経て電子書籍を配信する計画を発表した。両陣営とも、いずれは動画やゲームなど、コンテンツ全般の配信プラットフォームへと発展させる方針だ。それ以前からソフトバンクの「ビューン」や電通の「Magastore」など、コンテンツの配信プラットフォームは乱立の様相を呈している。

amazonのKindle、アップルのiPad、そしてシャープが発表した端末。電子書籍を巡る競争はこれから本格化する(画像クリックで拡大)

 中でもシャープの取り組みは野心的だ。単に端末を提供するだけでなく、動画や音声などマルチメディア対応の「次世代XMDF」という同社独自の規格(フォーマット)を提案。この規格に基づく、電子書籍のオーサリングや配信のシステムを新聞社や出版社に提供する。さらに米Verizonや英Vodafoneと提携交渉に入るなど、今後、自社の配信プラットフォームを国際展開する構えだ。

 しかし米欧など世界市場では、既にKindleを有するAmazonと、iPhoneやiPadを有するAppleが、配信プラットフォーム競争でつばぜり合いを演じている。プラットフォームは端末以上に重要だ。たとえばiPad発売の影響で、当初、売上の減少が危惧されたKindle向け電子書籍は、予想に反して、それまで以上のペースで売り上げを伸ばした。その一因は、Amazonが、Kindle向け電子書籍を読むためのアプリを、iPhoneやiPad、さらにはBlackberryやAndroid端末用にもリリースしたからだ。つまりAmazonの配信プラットフォームが、競合他社の端末上にも侵出したことで、同社の電子書籍事業は急拡大したのだ。

 書籍全体に占める電子書籍の割合はまだ小さいが、それは急成長しており、既にミリオン・セラーも生まれている。米Wall Street Journal(WSJ)紙によれば、米国の作家James Patterson氏が著した電子書籍は7月6日までに114万部が発売され、そのうち86万8000部がAmazonからだ。ここから電子書籍市場に占めるAmazonのシェアは、8割程度と推定される。一方Apple CEOのSteve Jobs氏は、電子書籍市場に占めるApple iBookstoreのシェアは20%と主張。となると、現時点の電子書籍市場をAmazonとAppleのプラットフォームがほぼ独占していると見てよい。

 そこにシャープが、XMDFという独自規格を引っ提げて乗り込む。WSJ紙は「シャープのプラットフォームは洗練されたマルチメディア・コンテンツには適しているが、米国のコンテンツ・プロバイダーはむしろiPadのような既に認知されたブランドに向けてコンテンツを提供するだろう」(みずほインベスターズ証券アナリストの倉橋延巨氏)という厳しい見方を掲載している。

(画像クリックで拡大)