USTA社がバックアップ

 ワーナーミュージック・ジャパンもUST活用に積極的な企業のひとつ。5月には大河ドラマ『龍馬伝』の主題歌を歌うリサ・ジェラルドをフィーチャーし、同ドラマのファンであるソフトバンク(SB)孫正義社長を招いたトークショーを配信した。「CD不況の半面、ライブ動員は安定しているなど、今は音楽を現場で体験したいという人が多い時代。USTはリアルタイムでのイベント参加を可能にし、その体験を複数のSNSでも共有でき、配信側も簡単に生中継が行なえる」(デジタルビジネス企画開発部の田中裕実子氏)。

 ワーナーは過去に「ニコニコ動画」でマドンナの専門チャンネルを開設するなど、以前から動画の活用に積極的。「動画プレーヤー下のニコニコ市場にCDやDVDの販促リンクを張ったところ、高いコンバージョン(※)を記録。アーティストの映像を見せて即購買につなげるという、動画の持つプロモーション効果がかなり有効と感じたからこそ、生中継を始めた面もある。USTにも同様の販促スキームを提案していますが、一方で、根本的な動画使用料についても現在交渉中です」(田中氏)。

龍馬伝、その音楽の全貌

『NHK大河ドラマ 龍馬伝 オリジナル・サウンドトラック Vol.2』(3150円)(画像クリックで拡大)

地球同時多発情報SHOW
革命×テレビ

ツイッターとも連携。茂木健一郎や浜田幸一らその週のゲストが映像を見つつ、ツイッター上に番組に対するコメントをつぶやいている。MCは雨上がり決死隊と小林麻耶。(日曜23時30分/TBS系)

 国内でのUST事業は、米Ustream 社と、これまで同社に約3000万ドルを出資したSBが立ち上げたUSTREAM Asiaが展開。現在、TBSやワーナーはUSTREAM AsiaやSBの協力の下(『革命×テレビ』はSBの1社提供)、映像を制作している。同社の中川具隆代表取締役社長は「USTが目指すのは誰もが使えるプラットフォーム。今は黎明期だけに企業のサポートを行うが、映像制作に深くかかわる予定はない」とし、「企業にとって魅力のある配信環境の整備を進めたい」と言う。

 その一環として、同社はUST上に表示される広告の収入を配信主と案分する契約の準備を始め、一方で、APIと呼ばれる映像配信プログラムを提供。企業が自社広告を張り付けた自サイトでUST配信することも可能にしている。また、音楽著作権管理団体と包括契約し、配信主が管理楽曲を生演奏する際の権利処理もできるようになった。USTが収益化の手立てと著作権を弾力的に取り扱える仕組み作りに積極的な点も、エンタ業界から注目される理由だろう。

 さらに「ライブ中継の有料配信も検討中。既に米国では試験的に行われており、近く実現したい」というワーナーらの声もあり、直接日本で課金できるシステムの開発も進めている。「例えば5000人の動員を見込んだライブを開くとき、その地域に4000人収容と6000人収容の会場しかなければ、空席覚悟で6000人の会場を選ばざるをえないこともある。その点、有料配信という選択肢があれば、4000人の会場を埋めつつ、1000人をUSTに誘導できるはず」(中川氏)。

 “今、見ている映像”で人々をつなぐUSTは、新たなスターを生み、ライブの動員を適正化するなど、エンタ業界の“今”を変える可能性すら秘めているのだ。

※…商品購入など、ウェブ上から最終的に獲得できた成果のこと。