作詞家も参加してデモテープを制作

 プロジェクトの第2回は5月5日。その間に実施された2曲目の歌詞の公募では、小林千早都氏の「21st Love Express」が選ばれた。1曲目を作詞したくまちょん氏とともに収録に参加し、歌入りデモテープが制作された。

 2曲目のテーマは「タイムライン」。黒酢を飲みながらレコーディングされ、でき上がったデモテープは今回もその場でMP3ファイルとして無料配布された。このMP3ファイルは、商用利用でない限り自由に利用・アレンジして構わない。プロのアーティストがこのような形で楽曲を配布すること自体もまれだ。

2回目の収録は、複数のUstreamで放送された(画像クリックで拡大)

 作品の著作権は、向谷氏、中西氏、作詞家の3人が保有することで合意されている。今回の試みは、ネットでコンテンツ配信ができる時代のおかげだが、誰もができるわけではない。というのは、プロのアーティストの多くがレコード会社との専属契約を結んでおり、勝手に演奏・録音することができないからだ。向谷氏と中西氏は、二人ともレコード会社との専属録音契約をしていないからこそ実現できたことだ。

 向谷氏は「レコード会社を敵に回すつもりはまったくない。しかしながら、TwitterとUstreamによって制作過程自体を見せることがコンテンツになると思っている。今回は、アーティストによるクリエイティブの現場を見せて、そのままネットで販売するという『産地直送』的な取り組みをした。音楽制作の現場をすべて見せることで、著作権やアーティストの権利、インターネット音楽配信のあり方について考えるきっかけにしたい」と語っている。

 中西氏は「わくわくして本当に楽しい経験でした。向谷さんが面白がってどんどん進めていく『偉大なる無邪気さ』にすっかり染まりました(笑)。Twitterのタイムラインと一体化して、みんなで作り上げることができたのは感動ですね」と語った。

 歌入りのデモテープ完成後、J-WAVEで放送されたUstream連携番組「BEST HIT UST」に向谷氏と中西氏が出演した。スタジオでは「Twilight Stream」を「iPadキーボード:向谷 実、歌:中西圭三」というコンビで演奏。UstreamとFM放送に同時に音楽が流れる画期的なできごととなった。この番組のMCを務め、Ustreamにいち早く取り組んできたDJ TARO氏サッシャ氏、ゲストだった坂本美雨氏もすっかり賛同し、向谷倶楽部のメンバーになっている。Ustream+Twitterでアーティストの輪が広がり始め、迎えたのが6月8~10日のスタジオ収録だ。日本では初と思われる8チャンネルのマルチストリーム放送によって、スタジオ収録の現場がUstreamで流れることになる。

2回目は作詞家のお二人も参加。手前左が小林氏、右が熊倉(くまちょん)氏(画像クリックで拡大)

 作曲やレコーディング時のUstreamは、すべて向谷氏のUstreamチャンネルに録画されている。6月8~10日の日付の入ったものがレコーディング現場のUstreamだ。プロジェクト全体の説明は、公式サイト「向谷倶楽部」にまとめられている。

(後編に続く)

著 者

三上 洋(みかみ よう)

 携帯電話とセキュリティーが専門のテクニカルライター。「Yomiuri Online サイバー護身術」(読売新聞社)などの執筆のほか、テレビや新聞などにコメントを寄せることも多い。ケータイ料金を徹底分析してケチケチ節約することが生きがい。「ライター三上洋事務所」で個人ブログを公開中。