“焦点のふらつき”は個人差が大きい

 では3D映像そのものに問題はないのか。人がモノを見るときには、輻輳角と、目のピント調節をつかさどる水晶体の伸縮が連動している。3D映像では輻輳角は変わるが、そこにはピントを合わせるべき物体が存在しないため、「焦点が非常にふらついてしまうという研究結果がある」(3Dコンソーシアム安全ガイドライン部会長・千葉滋氏)。これが眼精疲労に結びつく可能性はある。だが「3D映像でも、輻輳角と焦点調節を連動させたり、ふらつかずにピントをスクリーンに合わせられる人もいる」(同氏)。要は個人差が大きいということだ。

 3D映像を見て、乗り物酔いに似た感覚を催す「3D酔い」も同様だ。そもそも手ブレのひどい2D映像などでも映像酔いはあるため、映像に酔うというのは、3D特有のものではない。ただ、「3Dは、2Dの上下左右の動きに前後の動きが加わり、揺れの要素は増える」(埼玉医科大学保健医療学部教授・小林直樹氏)ため、可能性レベルでは3Dのほうが酔いやすいと考えられる。

 産業技術総合研究所が行った、2Dと3Dを視聴した際の影響を比較した実験によると、確かに3Dのほうが酔いを感じる人が多かった。だが「人によっては、差がなかったり、2Dのほうが大きい値を示すこともあった」(同研究所の氏家弘裕氏)ため、これも個人差レベルの問題ということになる。

 2Dと3Dの映像で脳の働きの違いを調べた実験では、脳波へのネガティブな影響は確認されなかった。実験を担当した横浜市立大学医学部長の黒岩義之氏によると、「2Dは自然界のなかではむしろ不自然なもので、3Dのほうが脳にとっての自然に近づく」(同氏)。完璧に情景を再現できる3Dができれば、むしろ2Dより脳に良い影響をもたらす可能性もあるという。

 ただ、3D映像については、「研究段階のものがほとんどで、解明されていない部分は多い」(小林氏)。今後の結果を待ちたいところだ。

 ちなみに、同じ3Dテレビでも、メーカーによって違いがあることも覚えておきたい。パナソニックの3D VIERAはメガネに偏光フィルターがあり、多少首を傾けても立体に見える。一方、ソニー3D BRAVIAはフィルターがなく、少し傾けると立体視ができなくなるという違いがある。ただ、前述のガイドラインで画面に対して真っすぐに見るのが正しい視聴方法として推奨されており、「傾けて見えているから良いというわけではない」(千葉氏)という。

3Dテレビは寝転がって見ないことが大前提になる(画像クリックで拡大)

 日経トレンディ7月号「最新テレビの実力」では3Dテレビの安全性のほか、3D VIERAと3D BRAVIAの比較検証やコンテンツの準備状況など、3Dにまつわる情報を幅広く紹介。合わせて、LEDテレビやBDレコーダーについても紹介している。

(文/佐藤央明=日経トレンディ)

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