「携帯電話とノートPCの間にある第3のスクリーン」――自慢のiPadをスティーブ・ジョブス氏はこう位置付けるが、他にも新たなスクリーンが続々登場しつつある。たとえば電子ブック・リーダー、デジタル・フォトフレーム、ウエブTV、車載情報システム等々。いずれもインターネットに接続し、様々な情報をスクリーンに表示するデバイス(情報端末)だ。

 これらマルチ・デバイスは、従来のパソコン(汎用端末)がユーザー・ニーズの多様化に伴い、複数の枝へと分岐してきたものだ(米国では「エマージング・デバイス」、あるいは「コネクティッド・デバイス」などと呼ばれる)。それを象徴するように、今年の米コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)には、半導体大手のインテルがスマートフォンやタブレット、あるいは一見、細長いテレビ・リモコンのような謎めいた端末など、数々のデバイスを出品していた(下の写真)。これまで専らパソコン向けにCPUなど各種チップを提供してきたインテルが、これら新型デバイスを自社ブースの最前列に展示することは、IT業界の中心が新たな領域へと移行していることを如実に物語っている。

インテルがCES2010に出展したマルチ・デバイスの試作機(著者撮影)(画像クリックで拡大)

専用機 v.s. 汎用機の行方

 中でも成功するデバイスは、人々のライフ・スタイルに対する注意深い観察や洞察から生まれる。たとえば電子ブック・リーダー「キンドル」の製品化について、アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏はこう語っている。 「パソコンや携帯電話の普及により、人々は『情報のつまみ食い』に慣れて注意力が散漫になっている。そうした中で、じっくりと本を読むための端末が必要であると考えた」

 同氏の予想は市場の反応によって裏付けられた。米フォレスター・リサーチの推計では、2009年のキンドル販売台数は約180万台。これは長時間の読書にも耐える電子ペーパーを搭載したハードウエアと共に、書籍を無線ダウンロードできるサービスも好感されてのことだ。キンドルの成功に刺激され、今年のCESには世界中から優に20機種以上もの電子ブック・リーダーが出品された。会場で筆者が撮影したビデオの中から、ソニーの「リーダー(Reader Daily Edition)」と英プラスティック・ロジックの「キュー(Que ProReader)」をご覧頂こう。

 既に市場に出回っている電子ブック・リーダーの中で、リーダーはキンドルの60%に次ぐ35%のシェアを持っている。ボタン操作のキンドルに対し、リーダーはタッチパネルを搭載するなど、ハード面ではむしろキンドルに勝っている。また用意されたコンテンツの数でもキンドルに見劣りしない。それでもキンドルの後塵を拝しているのは、無線ダウンロード機能の導入や通信代金の無料化などサービス面で後れを取ったからだ。 一方、薄さが特徴のキューは今年4月に発売予定だったが、米国でiPadが4月に発売されたのを受けて、今年夏へと発売が延期された。キューは当初800ドルで発売される予定だったが、多目的に使える汎用機のiPadが499~829ドルに設定されたので、価格面で太刀打ちできないと判断したのだろう。業界関係者の見方では、電子ブック・リーダー専用機が今後市場を確保するには、100ドル以下にまで価格を下げる必要がある。こうした中、フォレスター・リサーチは「台湾などアジア・メーカーの進出により、2011年には100ドルを切る」と予想している。

電子ブック・リーダーに対するユーザーの反応(画像クリックで拡大)