映画やプロモーションビデオなどの制作現場に、米RED DIGITAL CINEMA社の超高解像度カメラシステム「RED ONE」が普及し始めている。『チェ 28歳の革命』(2008年公開)や『築城せよ!』(2009年公開)といった劇場公開映画のほか、2010年3月13日に放映されるBSフジ開局10周年記念番組 パンテーンドラマスペシャル『初恋クロニクル』にも使用されているという。

 フルHD(1920×1080ドット)の4倍以上である4K2K(4520×2540ドット)の解像度を持ち、映画用カメラ向けレンズを使用できるRED ONEを、ドラマの撮影現場に活用した経緯や狙いについて、フジテレビドラマ制作センターの関谷正征プロデューサーに聞いた。

『初恋クロニクル』の撮影シーン(画像クリックで拡大)

4K2Kカメラ「RED ONE」選択の理由は「解像度」より「レンズ選択肢の幅」

──テレビドラマ全編の撮影にRED ONEを利用したとのことですが、RED ONEを選んだ狙いはどこにあるのでしょうか。

関谷氏: RED ONEは4K2K(RED ONEの撮影解像度は4520×2540ドット)の撮影が可能ですが、4K2Kの解像度が必要なスーパースロー撮影がこのドラマの中にあるわけでもありません。それよりも、映画撮影用カメラと同じ35mmレンズがテレビドラマでも使えるというのが大きかったですね。

フジテレビドラマ制作センターの関谷正征プロデューサー(画像クリックで拡大)

──一般的なテレビカメラのレンズとはどのような点が違うのでしょうか?

関谷氏: 通常僕たちが使っているテレビカメラとは被写界深度(※)が大きく違うんです。レンズ選択の幅が広いので、画一的な深度で映像を撮るのではなく、場面に応じて選べるのも魅力です。だから、よりきれいな絵が撮れるんじゃないかと思ったのが(RED ONEを選択した)一番の理由ですね。

※被写界深度……写真や映像のフォーカスが合っている範囲のこと。被写界深度が深いと手前から奥まで広くフォーカスが合い、浅いと一部にだけフォーカスが合う。一般的に明るい(開放F値の小さい)レンズほど被写界深度が浅く、暗い(開放F値の大きい)レンズほど深い。レンズの絞りを開くと(F値を下げて)被写界深度の浅い、ボケ味の効いた映像を撮影できる。逆にレンズを絞ってF値を上げると、被写界深度の深いパンフォーカス(手前から奥までフォーカスの合った)映像を撮影できる。

『初恋クロニクル』の撮影に使用した4K2Kビデオカメラ「RED ONE」(画像クリックで拡大)

──『初恋クロニクル』というドラマでRED ONEを選んだ、そもそものきっかけは何だったのでしょうか。

関谷氏: 最初は『赤い糸』(2008年12月から2009年2月までフジテレビ系でテレビドラマを放送し、2008年12月に映画版も公開された。南沢奈央、溝端順平主演)という映画&ドラマでした。24pから30pへの変換システムが効率的になったことで、テレビ制作が映画制作の根幹にグッと近づいた瞬間とも言えると思います。

※24p、30p……24pは秒間24コマをプログレッシブスキャン(1回の画面表示を1回の走査で行うこと。1回の画面表示を2回の走査で行うことを「インターレーススキャン」と呼ぶ)で記録・表示する映像のこと。30pは秒間30コマ。フィルム撮影の映画は秒間24コマで記録しており、その“パタパタ感”や、フィルムならではの粒状感(フィルムグレーン)などが「映画らしさ」を形作っている。テレビは60i(秒間60コマのインターレーススキャン)で放送されているため、テレビカメラも60iに対応している。

関谷氏: 『赤い糸』では24pで映画を撮影しました。24pの映像をコンバートするだけで30pにできるので、ドラマ版はそれで放送しました。つまりポスプロ(ポストプロダクション:撮影後の工程のこと。映像編集や音楽編集、映像効果の追加合成などさまざまな作業が行われる)だけで映画とテレビと両方を制作するということを試みたのです。このドラマは、映画とドラマの費用対効果を真剣に考えてみるという初めてのきっかけでした。

 その次が『オトメン(乙男)』というドラマです。これは本編をテレビスタッフで撮り、僕がPV(プロモーションビデオ)やCMを作る時に一緒に仕事しているチームがエンディングをRED ONEで撮りました。そのエンディングがすごくかっこよかったので、本編に取り込んでみたいなと思ったのです。

 今回RED ONEを選んだのも、フィルムライクな絵を撮りたいと思った時に、35mmフィルムカメラ用レンズが使えるカメラがある。しかもローコスト。ならば使おうという順番でした。

 (『初恋クロニクル』のドラマを放送する)「パンテーンドラマスペシャル」は“絵のビューティー”にこだわっています。被写体を美しく撮ることや、風景の中にキャラクターを置いて雰囲気のある絵を撮ることが重要です。そうやって今年7年目を迎えたドラマなので、実際にRED ONEを使ってみるいい機会だと思いました。