いわゆるコモディティー化やデフレ化によって、日本のデジタル家電の物作りは正念場を迎えつつある。そうした状況の中でも元気に見えるのがムービーの分野だ。ムービー対応デジカメのほか、多機能なビデオカメラ、新世代のWebアップロードカメラなどが登場。ムービーの分野が最も元気で未来志向に思えるのである。

 ソニーの「Cyber-shot(サイバーショット) DSC-HX5V」はそうしたムービー分野の、さらに最先端に立つ野心的なデジカメである。コンパクトながらAVCHDフルHD撮影に対応するなど、ハンディカムに迫るエポックメイキングな新機能を実現している。新世代のムービーデジカメ開発に賭ける意欲とこだわりを、増田和夫がサイバーショット開発陣に聞いた。

左から、ソニー コンスーマープロダクツ&デバイスグループ パーソナル イメージング&サウンド事業本部 イメージング第2事業部 技術設計部 ソフトウェア設計担当部長 有留憲一郎氏、ソニー コンスーマープロダクツ&デバイスグループ パーソナル イメージング&サウンド事業本部 イメージング第2事業部 商品設計部 3課 プロジェクトマネジャー 山口幸一郎氏、ソニー コンスーマープロダクツ&デバイスグループ パーソナル イメージング&サウンド事業本部 商品企画部門 イメージング商品企画2部 企画課 越智龍氏(画像クリックで拡大)

当初からAVCHD Liteを採用するつもりはなかった

増田: はじめにDSC-HX5Vの位置付けと製品コンセプトをお聞かせください。

商品企画を担当した越智氏(画像クリックで拡大)

越智氏: コンパクトなハイズーム機(10倍や12倍といった高倍率の光学ズーム搭載モデル)という意味で、DSC-HX5Vは従来モデル「DSC-H20」(米ソニーが2009年4月に発売した約1010万画素センサー・光学10倍ズーム搭載モデル。国内未発売)の後継機と考えています。H20のような一眼ライクなフォルムと樹脂製ボディーというのは、写真ファン向きでユーザーを選びます。HX5Vは、もっと多くの方々にお使いいただける親しみやすいメタルボディーのコンパクト機にデザインしました。

 同時発表の「DSC-TX7」ほどスタイル寄りではなく、旅行やファミリーユースにふさわしいハイズーム機です。ムービー機能から見ると、従来のPC用の動画機能ではなくて、テレビなどのAV機器でハイビジョンを本格的に楽しめるモデルというのが基本コンセプトです。ユーザーのターゲットは、写真だけでなく日常のクリップムービーも撮りたい方々です。

「DSC-HX5V」(左)と、2009年4月に米国で発売した「DSC-H20」(右)(画像クリックで拡大)

「DSC-HX5V」(左)と、2010年2月に発売したスリムタイプのAVCHDムービー対応デジカメ「DSC-TX7」(右)(画像クリックで拡大)

増田: 720P(AVCHD Lite)ではなくて、1080PのフルHD(AVCHD規格)に対応した理由は何ですか。

越智氏: ムービー対応するなら、中途半端にはやりたくないという気持ちがありました。ムービーカメラのリーダー企業として、ハイビジョンをサポートするなら本格的なフルHDに対応しようという目標が当初からあったのです。このためHX5Vについては、当初からAVCHD Liteを採用することは全く考えていませんでした。

 AVCHD LiteもAV機器との互換性はありますが、日本では当社をはじめとしたフルHDのAV機器が普及しています。フルHDに慣れたお客様にとって、違和感のない映像を撮れるカメラにしたいと考えていました。ハイビジョンテレビの大画面で見ても自然な映像にしたいということです。すでにハンディカムのユーザーの方々も多いですから、いくつもの解像度のカメラを出してお客様を混乱させたくありません。このためにはフルHDのAVCHD規格に対応することが必須と考えたのです。

ソフトウェア設計を担当した有留氏(画像クリックで拡大)

有留氏: 当社のAV機器は、1080HD(フルHD解像度の1920×1080ドットまたは、地上デジタル放送やHDVビデオカメラなどの解像度1440×1080ドット)を基本にやってきました。それと同じレベルで使えるカメラにしたいということで、フルHD対応を決断しました。

増田: HX5Vのサイズやスタイルはライバル機(パナソニック「LUMIX TZシリーズ」)と似ていますが、ライバル機を特に意識したのでしょうか?

越智氏: 一つのメーカーに限らず、ハイズーム機というジャンルは常に意識しています。しかしライバル機を模したつもりはなくて、コンパクト化の帰結だと思います。ハイズーム機はかなりコンパクトになってきています。光学系やフラッシュなどのレイアウトを考えていくと、必然的にこうしたフォルムとボタン配置になったということだと思います。

DSC-HX5V(左)と、パナソニックが2009年3月に発売した「LUMIX DMC-TZ7」(右)(画像クリックで拡大)

DSC-HX5V(左)と、パナソニックの「LUMIX DMC-TZ7」(右)(画像クリックで拡大)

DSC-HX5V(手前)と、パナソニックの「LUMIX DMC-TZ7」(奥)。右端にモードダイヤルを配置した点なども似ている(画像クリックで拡大)