「はえぬき」の失敗から学ぶ“数の力”戦略

 山形の期待の星といえるつや姫だが、意外にも県は、つや姫の種子をすでに他県に配っている。これは、かつて全国区のブランド米を目指して失敗した「はえぬき」の教訓からだ。はえぬきは県内では主要ブランドに育ったものの、県外では業務用がメインで知名度は低い。ある大手コンビニのおにぎりは大部分がはえぬきだが、品種名は伏せて売られている。ブランド化に失敗した要因は、デビュー後3年間は生産者を県内に限定した点にあるという。その間に他県のブランド米が普及し、3年後、はえぬきの栽培地は思うように広がらなかった。「全国で勝負できるブランドになるには、1県の力だけでは難しい」(嶋津氏)。栽培地をいち早く県外にも広げ、“数の力”で市場を占めていくことが不可欠なのだ。

09年の先行販売分は2kgで1000~1500円程度と、プレミア価格で売る店が多かった(画像クリックで拡大)

山形の新星  つや姫

過去の失敗を糧に目指す
県を挙げての天下取り

 山形県が「コシヒカリを超える食味」と胸を張る新品種で、2010年秋の全国デビューを目指している。同県では92年にデビューした「はえぬき」以来の有望品種となる。食味の評価だけでなく、稲の倒れにくさや収穫量の多さなど、生産しやすさでもコシヒカリを上回っているという。

09年はプレデビューとして300tだけ先行発売され、1カ月でほぼ完売した(画像クリックで拡大)

「はえぬき」の失敗を教訓に

はえぬきは食味の評価は全国でもトップレベルであるにもかかわらず、山形県外に栽培地を広げられなかったため、全国的な知名度は低い。これを教訓に、つや姫はデビューを待たずに全国28府県に種子を配布。すでに宮城県が県の奨励品種に採用を決めている

山形はえぬきは日本穀物検定協会の食味ランキングでは、魚沼コシヒカリと並んで15年連続「特A」を獲得している(画像クリックで拡大)

デビュー前から“Jリーグデビュー”

地元Jリーグチームのモンテディオ山形は09年からユニホームの胸につや姫のロゴを入れている。世に出る前の商品のロゴが入るのは珍しい(画像クリックで拡大)

 

吉村美栄子山形県知事が、先頭に立ってPRしている(画像クリックで拡大)

注)炊飯米に含まれるアミノ酸含有量(グルタミン酸とアスパラギン酸は代表的なうまみ成分)。慶応義塾大学先端生命科学研究所・後藤元、大友一子、08年