デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏

 2011年7月のアナログ停波を控え、不況下でも薄型テレビ市場は依然として活況を呈している。その中でも特に注目されているのが「録画機能付きテレビ」だ。日立製作所が03年に先べんを付けた“録画テレビ”だが、04年には東芝、08年にはパナソニックとシャープ、09年には三菱電機が製品を投入。録画機能付きテレビの市場シェアは15%を超え、20%に達しようとする勢いとなっている。

 2009年12月には、ついに地上デジタル放送の“全録”(全チャンネル録画)を実現する東芝「CELLレグザ 55X1」が発売される。ここ数年で大きな進化を遂げた録画テレビは、今後どのような方向に進んでいくのか。デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏に聞いた。

前編はこちら

「CELLレグザ」が投げかけた波紋は今後のテレビを面白くする!

 「録画テレビ」の今後の道筋を雄弁に指し示しているのが、東芝が「CEATEC JAPAN 2009」会場で発表した「CELLレグザ」です。

2009年10月開催の「CEATEC JAPAN 2009」で東芝が発表したフラッグシップ液晶テレビ「CELLレグザ 55X1」(画像クリックで拡大)

55V型ディスプレイ部とチューナー部に分かれたセパレートスタイルを採用している(画像クリックで拡大)

 CELLレグザが登場した“意義”は、「これからテレビはもっともっと面白くなる!」と示したことです。10年ほど前にテレビがSD(標準画質)からHD(ハイビジョン)に進化したのは大きなエポックでした。しかしここにきてその効果が薄れてきて、ハイビジョンが当たり前になってきたので、現在の安売り化、コモディティー化への流れが強まっているのです。

 でも「映像」はそういう安売りの対象ではないんですよ。映像を録画したり視聴したりするのは、もっと楽しくてもっと面白いことです。今は袋小路に入り込んでいるテレビですが、新しい発展の道は映像にも音にも、機能性にもメディア性にも存在しています。すべての面をもう一回リニューアルさせればより面白くなるんだよ、と明確に提案したことがCELLレグザの意義だと思います。

 もう一つ言えば、CELLというプロセッサーの「信号処理能力」によって、ここまでのことができるという可能性を示した功績も大きいですね。ローカルディミング(LEDバックライトの部分駆動)をCELLで調整したり、超解像処理を行うことによって画質そのものを上げることができますし、全録や8チャンネル同時視聴などの高度なメディア機能をストレスなく直感的にコントロールできるのもCELLの力です。CELLでネットワークも含めたトータルコントロールもできます。

CELLレグザのチューナー部「CELL BOXユニット」に内蔵する「CELLプラットフォーム」(画像クリックで拡大)

 音はCELLの能力を直接生かしたものではありませんが、コンテンツの音質設定などに使っています。今後、CELLの音超解像などのCELLだから信号処理で音が良くなるという“CELLソリューション”も期待できますね。今回はスピーカー周りやアンプ周りに、従来にはない高いレベルの音を仕込みました。これによって悪くなる一方だった薄型テレビの音に対して歯止めをかけるだけでなく、音にこそ大きな可能性があることを示しました。

 CELLレグザのドライバーにはフォスター電機のネオジウムユニットを使っているとか、マルチチャンネルアンプを採用しているなど、技術的なポイントが多数あります。しかし開発当初はいかにも帯域が広くてクッキリしている感じの“技術的な音”がしていました。だんだんそれが収れんしていく中でセリフも聞きやすくなり、音楽もクリアになっていきました。悪いスピーカーだと、音楽は良くてもセリフが不自然で聞きづらいということがよくありますが、CELLレグザのスピーカーはセリフも音楽もいいバランスをとっています。そういう意味では、これからのテレビが持つべき音の一つの基準を示したと思いました。

CELLレグザに搭載する「CELLレグザスピーカーユニット」。CELL BOXユニットに内蔵の、総合出力60Wのマルチアンプシステムを備える「CELLレグザオーディオシステム」との組み合わせによって「これからのテレビが持つべき音の一つの基準を示したと思いました」(麻倉氏)(画像クリックで拡大)

 従来は、シャープやパナソニックのようなパネルから製品まで自社で行う「垂直統合モデル」だからこそ、ハイレベルな製品作りができるという考えがありました。東芝は「水平分業モデル」です。そのときに一番使えるパネルを世界中から持ってきて、パネル以外の画質エンジンや録画機能などで付加価値を生み出しました。その究極としてCELLレグザの面白さや意義があります。