ビールの最大の需要期である夏を過ぎたのに、ビール市場が熱い。注目されているのは、清涼飲料水である“ノンアルコールビール”。大手4メーカーが投入する商品の実力や、登場した背景を探った。

 ※この記事は発売中の日経トレンディ12月号(11月4日発売)から転載したものです。情報は基本的に発売時点のものとなります。

独走状態の「キリン フリー」を追う後続3社
業務用ビールのシェア防御が狙い?

 2009年春、キリンビールの「キリン フリー」がブームを起こしたノンアルコール・ビールテイスト飲料市場。ビールを飲めなかったドライバーなどに人気だ。それから遅れること約5カ月。ライバルメーカーも対抗商品を相次いで投入し、大手4社が出そろった。

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 フリーが発売される前のビールテイスト飲料はビール同様、麦汁の発酵段階でアルコールが生成される。割合は多くても0.5%程度にすぎないが、絶対に酔わないとはいえなかった。

 ならば、発酵させなければいいと思ってしまうが、そう簡単な話ではない。苦みや甘み、香りなどの、「ビールらしい」「おいしい」と感じるバランスは、この発酵によるところがとても大きいからだ。ビールの味わいを仮に100とすると、「発酵前の麦汁は、10あるかどうかというイメージ」(キリン)。発酵させることなく、ビールらしい味にどこまで近づけられるかがカギとなるわけだ。キリンの場合、3つの製法技術を開発して、フリーを完成させている。

 では、キリン フリーの発売から半年足らずの短期間で、残る3社はなぜ商品化できたのか。キリンは、「フリーがヒットすればという条件付きで、追随は想定済み。ただ、その時期は2010年の春ごろには出るだろうというレベルなので、他社の商品化は早かった」と話す。実は、後続3社の開発着手は、フリーの発売よりはるか前だ。道路交通法の改正を受けるかたちで、低アルコールのビールテイスト飲料が各社から投入されたのが02年から03年。「理想はアルコールゼロだったが、ビールの味を出すのは難しかった。低アルコールの商品投入後も研究は進めており、フリーの登場が商品開発を早めた」と後続3社は説明する。ただ、「商品化を強く後押ししたのはフリーの大ヒット。アルコールゼロに対する正確なニーズを読みきれていなかった」と、あるメーカーは打ち明ける。

 商品化は、「キリン フリーによる飲食店への影響を警戒したからだろう」と指摘する業界関係者も複数いる。キリンの担当者がフリーを携えて、後続3社のビールを置く飲食店へ営業をかけるのを防ぐのが狙いというのだ。「後続3社にとっては自社のビール契約店へフリーを置かれると、キリンの担当者にビールの切り替えも提案させるすきを与えることになる」(卸売業者)。

 市場はニッチだが、火花が散っているのは間違いない。次ページでは、各商品を飲み比べた結果をリポートする。

キリン フリーの大ヒットが新市場をつくった

キリン フリーが登場
アルコールを一切含まないビールテイスト飲料は、世界初。その新規性が話題を呼んで、記録的な大ヒット


遅れること約5カ月後
競合他社も続々商品化
1日のアサヒ ポイントゼロを皮切りに、29日にサントリー ファインゼロ、翌30日にサッポロ スーパークリアが相次いでマーケットに登場

 アルコールゼロというわかりやすい特徴が、ドライバーなどの心をつかんでいるノンアルコール・ビールテイスト飲料。「世界初」という看板を引っ提げて最初に仕掛けたのは、09年春に発売したキリンだ。現在は、残る大手メーカー3社が追随して同種の商品を投入しており、新たなマーケットが立ち上がっている。


 注目を浴びる市場だが、規模そのものは小さい

ノンアルコール・ビールテイスト飲料 キリン フリー 350万 425万
アサヒ ポイントゼロ 40万
サントリー ファインゼロ 30万
サッポロ スーパークリア 5万
ビール アサヒスーパードライ 1億2530万
発泡酒 麒麟淡麗〈生〉 3371万
新ジャンル キリン のどごし〈生〉 4086万

注)単位はケース。ノンアルコール・ビールテイスト飲料は各メーカーの09年の年間販売目標(10月時点。フリーは発売当初約63万と設定)で、それ以外は08年の販売実績