最新作『隠蔽指令』プロデューサーに聞く作品の見どころ
WOWOW制作局 井上衛氏

大人でないと楽しめない魅力が凝縮した金融ドラマです

 10月18日から始まる連続ドラマWの最新作『隠蔽指令』は、『ハゲタカ』をほうふつさせる金融ドラマだ。「ドラマW」への取り組みや新作の見どころを、立ち上げ時から同枠に携わる井上衛プロデューサーに聞いた。

いのうえ・まもる
1969年生まれ、兵庫県出身。新聞社、劇団四季を経て、WOWOWに。主なプロデュース作品に『春、バーニーズで』『孤独の歌声』『シリウスの道』など

 『隠蔽指令』は、これまで同枠で作ってきた連ドラの中でも、一番エンタテインメント色の強い作品です。

 WOWOW加入者は、社会性が高いテーマと熱い人間ドラマが好きなので“リアルドラマ”的な企画が多くなる傾向があります。しかし、ドラマ枠自体が地上波に比べると圧倒的に少ないため、企画はすごく精査されています。

 地上波より自由に作れるとはいえ、加入者の方々の反応はカスタマーセンターを通じて随時伝わってくるので、「なんでもあり」というわけでは決してありません。もともとは映画や海外ドラマを見るために加入された方々の視聴料から多額の制作費を捻出するわけですから、いつも“結果を出さないと明日はない”という切羽詰まった意識を持ってかかわっています。地上波と同じものを作るなら、わざわざWOWOWが作る必要はないですからね。

海外ドラマに並ぶものを

 NHKとも違うことをやりたいと思っていますが、CMなしで、社会性が高く、視聴年齢が高めとなると共通する部分も多くて、意識はしています。キャスティングも、地上波であることにこだわらず、作品内容を重視してくださる役者さんとなると、似てくることもあります。

 しかし、こちらは人気海外ドラマやハリウッド映画に並んで放送され、そのなかでチャンネルを変えられないようなドラマを目指しているという自負があります。

 今回の新作『隠蔽指令』は、主演がドラマW初登場の高橋克典さん。これまで高橋さんがやっている地上波の作品というと『特命係長・只野仁』や『サラリーマン金太郎』といった強いキャラクターが多かったのですが、この作品では真逆のイメージで上司役の古谷一行さんや代議士秘書役の高嶋政宏さんに翻弄(ほんろう)され、追い込まれていく銀行頭取秘書役を演じます。シリアスに苦悩する、地上波ではあまり見られない克典さんを見てください。他の役者さんも、高嶋さんは裏表ある代議士秘書役で素晴らしい演技をしていたり、これまでになく色気のある役に挑戦している市川由衣さんなど、大人の魅力がいっぱいです。

 原作は08年に出版された江上剛さんの経済小説。江上さんは、『金融腐蝕列島』に登場する人物のモデルにもなった元銀行員です。ですから、リアルな金融業界の実態を下地に、様々なエピソードが積み上げられ、政界との関係や、合併の駆け引き、不良債権、貸し渋りといった銀行の裏面や、社内不倫や上司の裏切りといった会社員の悲哀、家族の人間ドラマなどがふんだんに盛りこまれています。なかでも、一番のポイントは、どんな立場の人でも誇りとプライドを持って生きているという希望を残した結末。それを、フジテレビなどで活躍されてきた星田良子監督と、同じくベテラン脚本家・伴一彦さんのコンビが、息つく間もなく事件が起こる、スピーディーな海外ドラマテイストに仕立ててくれています。

 今後は、WOWOWのドラマWから、例えば海外医療ドラマの名作『ER』のように、シーズン2、シーズン3と続くオリジナルドラマを育てていきたいですね。それを見るために加入者が増えるドラマがたくさんあれば、局としても強くなれると思う。そして、それこそがWOWOWがドラマを制作する、本当の意味だと思っています。

金融界・政界が舞台の本格サスペンス。銀行頭取秘書・天野(高橋克典)が、上司の命令で運命に翻弄されていく姿を描く。日曜22時/WOWOW /10月18日スタート

文/波多野 絵理・写真/辺見 真也(井上氏)

■変更履歴:本記事中、高嶋政宏さんを誤って高橋政宏さんと記載しておりました。お詫びして訂正させていただきます。(09/10/13 15:30)